転売と向き合う

 昨日、ずっと楽しみにしていたアーティストのライブがありました。雨天の野外ライブだったにもかかわらず満席。さらに、ライブが終わり駅までの道に、女性が「明日のライブのチケットを譲ってください」と書かれた紙を持って立っていました。こんな人気のある公演のチケットは争奪戦となります。何か月も前に抽選があり、当選しないと手に入りません。ここで外れた人たちを狙って、高い価格でチケットを売ろうとする業者などによる買い占めが増えていることが問題視されています。

 23日の新聞各紙に日本音楽制作者連盟や日本音楽事業者団体などの団体による共同声明が発表されました。「音楽の未来を奪うチケットの高額販売に反対します」とし、116組のアーティストや24の音楽イベントがそれに賛同しています。音楽を伝える、届ける人たちがノーを突きつけたことになります。

 一方で、転売サイト「チケットストリート」の西山圭社長は「あまりに高額なものは売れないし、定価の半額になることもある。自由な価格設定で、本当の価値で取引できるようになる」と反論しています。確かに、昨日のライブのチケットも売られていましたが、公演日が近づくにつれて価格は落ちていき、最終的には定価を割り込んでいました。

 必死の思いでチケットを確保したファンの一人として、正規の方法で手に入れてない人たちが、しかも定価以下でチケットを買ってライブに参加していることに違和感を覚えます。ただ、転売サイトやネットオークションに頼らざるを得ない現状があるのは事実です。公演日に急用でいけなくなってしまっても、多くの場合、チケットを払い戻すことができません。

 周りに同じアーティストのファンがいれば個人間でやり取りすることができます。ですが、それができない場合はインターネットで代わりに行ってくれる人を探すしかありません。できるだけ多くの人がライブに参加できるためには、「転売」という行為を目の敵にするのでなく、何らかの形で共存する必要があるのではないでしょうか。

参考記事

28日付:朝日新聞朝刊(東京14版)3面(総合)「チケット高額転売NO 議論白熱」