「消滅」する自治体 止まらぬ札幌集中

民間の有識者でつくる「人口戦略会議」は24日、地方自治体の「持続可能性」を分析した報告書を発表しました。

報告書では、2050年までの30年間で20〜39歳の若年女性人口が50%以上減少する自治体が「消滅可能性自治体」とされ、全体の43%にあたる744自治体が当てはまるとされました。

896自治体が該当した14年の同様の調査からは改善が見られますが、外国人の増加によるところが大きく、人口の減少傾向に変わりはありません。

「静かなる有事」への備えは待ったなしとなっています。

 

◯道内117自治体が該当

北海道では、全国平均以上に「消滅」が進むと見られます。

報告書では、全179自治体の約65%にあたる117自治体が「消滅可能性自治体」に分類されました。

道内でも明暗が分かれています。

札幌市近郊の自治体では若年女性人口減少率は30%前後であるのに対し、旧産炭地域や渡島半島をはじめとした各地の自治体では50%以上の減少が予想されています。

減少率が道内ワーストの86.7%となった歌志内市では、50年には若年女性が僅か18人になるといいます。

函館市や小樽市といった、比較的大きな自治体も「消滅可能性自治体」に該当しています。

 

◯止まらぬ札幌への人口集中

札幌市への人口集中の実態も浮かび上がります。

報告書では、自治体間で人口移動がなく、出生と死亡だけで人口が変化すると仮定した推計である「封鎖人口」と、自治体間の人口移動を加味した「移動仮定」での推計が公表されています。両者を比較することで、自然増減と社会増減の実態を把握することができます。

移動を想定した場合、50年時点の札幌市の総人口は約175万人、若年女性人口減少率は24.4%。封鎖人口の場合は、総人口約151万人、減少率46.1%ですから、市外からの転入者が人口を支えることがわかります。

近年、札幌市は他の道内自治体に対して年間約1万人の転入超過となっています。都市が地方の人口を吸い寄せる構図になっていますが、今後もこの傾向は続きそうです。

 

札幌一強の弊害は、相次ぐローカル線の廃止など、様々な形で現れています。札幌市では自然増加を目指す施策が、その他の自治体では地域の魅力を高め転出を減らす施策が求められます。

 

◯参考記事:

4月25日付 朝日新聞朝刊23面(道内)「117自治体 消滅の可能性 10年前比で36が「脱却」 人口戦略会議」

◯参考資料:

札幌市「人口動態」

人口戦略会議『令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート』

日経電子版「自治体4割「消滅可能性」、30年で女性半減 人口戦略会議」(2024年4月24日)