今年で開業55周年の西武秩父線 開通からの歴史を振り返る

西武秩父線の開通から、今年で55年となります。埼玉県飯能市の吾野駅と秩父市の西武秩父駅を結ぶ19kmの路線で、1967年7月19日に工事が始まり約2年3ヶ月の期間をへて開通しました。当時は、セメントの主原料になる石灰岩を秩父から東京に運ぶことに使われていました。秩父地方には武甲山などから産出される豊かな石灰資源があり、西武秩父線は日本の高度経済成長を支えました。

吾野駅前の様子(5月2日、筆者撮影)

経路は山を貫く形で作られており、正丸駅と芦ケ久保駅間には私鉄の中で当時最長だった正丸トンネル(約4.8km)があります。トンネルの中には本線と副本線に分かれる分岐があり、信号場もあります。

しかし、1996年にはセメント輸送に利用していた電気機関車E851が引退。これにあわせて貨物輸送が全廃され、西武鉄道のセメント輸送の時代は終わります。当時、鉄路で東京方面にセメントを出荷していたUBE三菱セメント横瀬工場(埼玉県横瀬町)によると、貨物輸送が全廃されてからはトラックを使っているとのこと。秩父地方では現在もセメントの製造が続けられており、秩父太平洋セメント(埼玉県秩父市)は秩父鉄道を使って熊谷方面に輸送しているそうです。

 

西武鉄道によると、起点である吾野駅の1日平均駅別乗降人数は556人(2022年)。同駅には西武秩父線の起点であることを表す0キロポストがあります。駅の外は自然が豊かで、登山届の提出を促す看板やハイキングコースの案内があり、現在は登山客が多く訪れるそうです。他にもリゾート施設の送迎バス乗り場や売店があります。

西武秩父線の起点をあらわす0キロポスト(5月2日、筆者撮影)

西武鉄道は、秩父線の開通55周年記念イベントとして臨時電車を運行するほか、ウォーキング・ハイキングイベントを吾野駅や芦ケ久保駅、西武秩父駅などで開く計画です。車両基地でのイベントも準備されており、車両機器の操作、非常通報装置の取扱い体験などもできるそうです。

鉄道の歴史を振り返ると、日本の経済成長を支える重要な役割を担っていたことがあらためて分かります。生活に欠かせないインフラですが、レールが敷かれる経緯を調べると、地域の生活や経済基盤が見えてくるように感じました。

参考文献:

4月23日付 読売新聞朝刊 埼玉 24面「西武秩父線55周年祝おう」

参考資料:

西武鉄道Webサイト

https://www.seiburailway.jp/

一般社団法人セメント協会

https://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc.html

秩父太平洋セメント株式会社

https://www.ct-cement.co.jp/company/#04

UBE三菱セメント株式会社

https://www.mu-cc.com/corporate/history.html