生成系AIは怖い? 上手に付き合うには

ChatGPTを始めとする生成系AIは、近年急速に進化しています。長文を要約する、外国語を翻訳する、プログラミングのコードを書く、イラストを生成するなど、できる機能は続々と増えています。他方、誤情報や偽画像を簡単に作ることができるため、詐欺などの犯罪に悪用することも可能になってしまいました。

悪用を防ぐため、筆者が通う大学では、昨年から生成系AIの利用に関する注意喚起が行われています。セミナーの教授からは「生成系AIが生成した文章をレポートや論文に書き写す行為は『剽窃』にあたり、最悪の場合は退学処分となる。絶対にしないように」と厳しく指導されました。未知の可能性を秘める一方で危険な一面もある生成系AI。私たちは今後どのように付き合っていけば良いのでしょうか。

読売新聞社の世論調査では、生成系AIが社会に及ぼす影響について、大きな不安の声があがっています。例えば、偽情報を法律で規制する必要があると思うと答えた人は89%に達し、偽情報で世論が誘導される不安を感じる人は86%と、生成系AIへの恐怖心の大きさが読み取れます。

(5月7日付 読売新聞朝刊 1面より抜粋)

また、生成系AIを使わない方が良いと思う分野では、報道(36%)や選挙(33%)の割合が高く、生成系AIの利用や普及で不安に思うことでは「犯罪に悪用される」(65%)、「誤った情報が意図せず広まる」(63%)などが上位にあがっています。生成系AIによる誤情報が拡散することで、国民は報道機関や社会への信頼を失うだけでなく、著作権侵害や個人情報の漏えいなど様々な問題を引き起こしてしまいます。

(5月7日付 読売新聞朝刊 7面(特別面)より抜粋)

筆者は、これまで述べた問題に加えて、学校や塾など教育現場で生成系AIが多用されることに不安を感じます。小中高校では紙とペンを使って授業や課題をこなしてきた筆者ですが、大学入学後はパソコンを使う機会が圧倒的に増えました。その結果、生成系AIを活用して論文の要約や情報を整理することができた反面、「自分の手で書いて考える・覚える力」が失われたように感じます。

高校までは、まずノートに自分の考えやポイントを書き、その上で先生の話を聞いて、授業の内容を理解していました。しかし大学では、パソコンで情報を調べた上で自分の意見を書くことが可能になり、頭を使って考える機会が減少してしまいました。さらに生成系AIが誕生したことで、ChatGPTなどに聞くだけで簡単に情報が手に入り、文章まで作成してもらうことができ、もはや情報を調べてまとめる行為すら失われてしまいました。

小学校から高校までICT教育が活発に行われていますが、筆者は紙媒体での学習を続けてほしいと願っています。生徒が生成系AIを利用して、自分で何も考えずに課題を終わらせる危険性があるからです。特に理科の実験や観察、校外学習、図画工作などは、自分の五感を駆使して考えたり感じたりすることが重要です。小学校の頃、クラス全員で皆既日食を観察したことを今でも鮮明に覚えています。生成系AIに惑わされず、自分で考えることを忘れないようにしなければなりません。

 

参考記事:

・5月7日付(14版)1面 「生成AIの偽情報規制「必要」89% 世論誘導「不安」86%…読売世論調査」 関連記事2・3面、特集6・7面