ワンセグも、受信料を払うべき?

  高校卒業後、地元を離れ兵庫県で一人暮らしを始めて間もない頃です。ある日の夜10時頃、「ピンポーン」とインターホンが鳴りました。「こんな時間に誰だろう……」と出ると、相手は「NHKの者です」。「受信料を払って下さい」と、50代くらいの男性が訪ねてきました。

  当時、私は19歳。契約についてよく分からなかったので、「一度、親と相談して決めていいですか」と答えると、相手は「受信料の支払いは法律で義務付けられています」の一点張り。夜も遅く、見知らぬ男性が訪ねてきた怖さもあり、「早く帰ってほしい」との思いから、その場で契約をしました。一人暮らしをした学生や社会人の方なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。

  さいたま地裁で26日、興味深い判決が言い渡されました。テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話を持っているだけで、受信料を請求されるのは不当だとして、埼玉県朝霞市義の大橋昌信さん(40)が、NHKとの受信料契約の義務がないことの確認を求めたものです。裁判長は契約義務がないことを認める判断を示しました。

  訴訟の争点は、ワンセグ機能付き携帯電話の所有が、NHK放送の受信設備の「設置」に当たるかどうかです。放送法第64条には、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」とあります。判決では、「放送法は『設置』と『携帯』を区別している」とし、「『設置』に『携帯』を含むとする被告(NHK側)の主張には、国語的意味から相当の無理があると言わざるを得ない」と結論付けました。

  大橋さんの自宅にはテレビがなく、ワンセグ機能付き携帯電話は持っていますが、NHKの番組は見たことがなかったと主張してきました。NHKに電話で問い合わせたところ、支払い義務があると説明を受けたため、昨年8月に提訴していました。

  本来、携帯電話はメールや電話を目的とするものです。例えワンセグ機能が付いていたとしても、画面の大きさにも限界があります。わざわざテレビを見るために携帯電話を買う人がどれだけいるでしょうか。持っているから受信料を、というのは妥当とは思えません。

  地裁判決に対し、NHK広報局は「判決は、放送法64条の解釈を誤ったものと理解しており、ただちに控訴します」とコメントしています。しかし、受信料の支払いをやみくもに押し付けるのでなく、さまざまなライフスタイルを受け入れるべきだと考えます。

 

参考記事:

 

27日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)34面(社会)「ワンセグ携帯 受信料不要 さいたま地裁判決 NHKは控訴へ」

同日付 日本経済新聞朝刊(名古屋13版)38面(社会)「ワンセグ契約義務なし NHK受信料巡り判決 さいたま地裁」

同日付 読売新聞朝刊(名古屋14版)29面(社会)「ワンセグ受信料不要 NHKと契約義務なし さいたま地裁」

 

関連資料:

放送法

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO132.html#1000000000003000000006000000000000000000000000000000000000000000000000000000000