【特集】 WEB救命講習のススメ

前回のあらたにすでは、コロナ禍で中止が相次いでいる救命講習の代替措置としてのオンライン講習についてお伝えしました。今回は、実際に私がWEB講習を受けてみて感じたことをお伝えします。

私が利用したのは、消防庁制作の「一般市民向け 応急手当WEB講習」。「応急手当とは」という基本的なことから、一般市民の救命行為の大切さ、心肺蘇生の方法などを、いくつかの短い動画を見ることで学べるようになっています。

▲WEB講習サイトのページ。動画の下には字幕が表示されているので、聴覚障害を持つ方も受けることができる。要点だと思った部分はスクリーンショットを使えば後から簡単に見返すことができる。

筆者は2年ほど前に、消防士の方から実際に講習を受けたことがあります。今回のWEB受講前に、記憶を呼び起こしながら、人が倒れていた際の行動の手順を書き出してみましたが、最初の「周囲の安全確認」、人工呼吸をする際は「息を吹き込むのは二回まで」「胸骨圧迫は続けて30回行う」ということなど、重要なことがすっかり抜け落ちていました。思い出すにも時間がかかったので、いざというとき冷静に行動するには、日ごろの訓練が必要なのだと思い知らされました。

 

<WEB講習だからこそのメリット>

動画はそれぞれ1分〜4分ほどで、家にいながら30分ほどで全てのプログラムを受講できました。1つの動画を視聴するごとに1問ずつテストが登場し、理解度をチェックします。確認したい部分を巻き戻したり、再生速度を好きなように調整できたりするので、自分が重要だと思ったところを効率よく学ぶことも可能です。気になったことがあれば途中で動画を止めてインターネットで情報を得ることもできました。映像だからこそ、実際に救命行為を受けて命が助かった本人から体験談を聞くこともできます。

また、なかなか一般的な救命講習では見ることのない乳児の人形も用意されていました。CG画像による心臓の位置のイメージも、人形を前に言葉で「この辺り」と説明されるよりもわかりやすく感じました。

▲心臓の位置のイメージ。

 

<足りないところを補う工夫>

しかしやはり、実際に人形を触ることができないというデメリットはあります。WEB講習を受ける際は、座布団など胸骨圧迫の練習ができるものを準備したうえで、二人以上で行うことをお勧めします。「回復体位」のとらせ方などは、動画を見るだけよりも実際に人を動かしてみたほうがわかりやすいと思います。一通りプログラムを受講し終えたら、人が倒れているのを発見する場面から実際にシミュレーションしてみれば、より自信がつくでしょう。

▲正常な呼吸をしているが意識がなく、やむを得ず傷病者のそばを離れる場合は吐しゃ物で窒息させないように「回復体位」をとらせる。左を下にした場合、右手の甲に顔を載せ、下あごを出させて気道を確保。右足を前に出し、膝は90度曲げて後ろに倒れないようにする。(画像は消防庁一般市民向け応急手当WEB講習動画より)

多くの人にとって消防士の方とコミュニケーションをとることは容易ではないでしょう。「感染症予防のために、マウスピースがない場合は人工呼吸をしなくてもよい」「胸骨圧迫をするときは飛沫が飛ばないよう顔に布などをかけて」といったような新しい情報を漏れなくとりいれるため、またわからないところを質問するためには、ぜひzoomなどを用いてリアルタイムで専門の方とつながれる形の受講をお勧めします。

 

<救える命を救うために>

日本では、1日に約200人が心臓を原因とする突然死で亡くなっています。心停止してからただちに胸骨圧迫をすれば救命率は2倍に、AEDを用いて電気ショックを与えれば約6倍の命を救うことができます。

日本AED財団では、12月24日11時~12時にzoomを用いてオンライン講習を開催するとのことです。定員は90名、まだ十分に空きがあるようなので、以下でお申し込みを。日本AED財団 AED講習会のご案内

救急車が到着するまで生死の鍵を握っているのは、近くにいるあなたと言っても過言ではありません。いざというとき身近な人の大切な命を守るために。ぜひ家族、友人を誘って救命講習を受けてみてはいかがでしょうか。

▲応急手当WEB講習の受講証明書。動画を一通り見終え、修了テスト20問を受けた後発行された。

 

参考資料:

消防庁 一般市民向け 応急手当WEB講習

あらたにす 命を救うオンライン講習