命を救うオンライン講習

先月30日、名古屋市応急手当研修センターは、当面の間救命方法などを学ぶ定期講習を中止することを発表しました。今年6月15日から講習を再開していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けての措置です。これまでは、「入門」「普通」「上級」など様々なコースを合わせると1ヶ月に18回ほどの頻度で開催されていました。各コース2~8時間で、心肺蘇生法、AEDの取り扱い方法、異物除去要領、止血法などを学ぶことができるものです。名古屋在住、在勤または在学の方であれば無料で参加できます。

胸骨圧迫をするのとしないので救命率は約2倍違います。AEDを用いて電気ショックが行われれば、約6倍の命が救えます。(日本AED財団ホームページより)

救命率を上げるには、救急隊員が到着するまでの間、市民による協力が不可欠です。日本では、一年で約7.9万人の人が心臓突然死で亡くなっています。1日に約200人、7分に1人が命を失っている計算です。

▲心停止となってから電気ショックを与えるまでの時間と救命率。1分遅れるごとに10%ずつ低下する。(公益財団法人 日本AED財団 HPより引用)

心停止となってから電気ショックまでの時間が1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下しますが、119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は8.7分。救急隊や医師を待っていては、助かる命も救うことができないのです。応急手当研修センターは「救命技能を忘れることなく、維持向上させるため2年から3年間隔で定期的に講習を受けてください」と呼びかけています。

私の母は、一度、実際に人に心臓マッサージをしたことがあります。温泉で沈んでいた人を引き上げ、救急車を呼ぶ人、AEDを持ってくる人への指示をし、意識や呼吸、脈を確認して心臓マッサージをしたとのこと。周りに十数人の人はいたものの、母以外、心臓マッサージを率先してやろうとした人は誰もいなかったことを覚えていると言います。救急隊員が来るまでの約10分間、必死に一人で心臓を動かし続けたそうです。母自身は年に一回は地元自治体が開催する救命講習に自分で申し込んで参加していました。万が一の時に家族を守るため、自らの意識づけと新しい情報収集のためです。「学びの経験が活きた。焦っているとスピードも早くなりがちだけれど、講習を思い出して、ペースを整えることができた。」と教えてくれました。

コロナ禍で、「万が一」のための救命講習の開催は制限されていますが、代わりにオンライン講習を始めている自治体もあるようです。手に入りやすいペットボトルを人形代わりに心臓マッサージを教えるなど、様々な工夫を凝らしています。心臓マッサージをする際に顔に布を被せるなど、現在は感染症予防をしながらの手当の方法も呼びかけています。

ぜひ一度この機会に、近くの自治体の救命講習について調べ、家族や友人を誘って申し込んでみてはいかがでしょうか。オンラインであれば、どこにいても受けることが可能です。実際に人形の胸を圧迫しなくても、手順を確認し、感染症対策をしながらの行動を具体的にイメージすることは、いざという時の落ち着いた迅速な行動につながります。

身近な人の命を守るために。私も今週末、オンライン講習を受けてみようと思います。

 

 

参考記事:

2日付 読売新聞朝刊(愛知12版)17面(くらし)「救命講習 知恵絞り実施」

参考資料:

名古屋市 応急手当研修センターが開催する定期講習のご案内

公益財団法人 日本AED財団 AEDの知識