巣立ちへの支援

「本当に、私は一人なんだ…。」ぽつりと語るAさんの目を忘れることができません。私はあるフォーラムに参加しました。社会的擁護の質を向上させていくために何が必要か考えるものです。里親や児童養護施設の下で育った青年たちが登壇していました。

奨学金を利用し四年制大学に進学をする決断をしたAさん。「生活するための基本的な知識がない」、「相談相手がいない」、「家がない」、「お金がない」。わからないことばかりです。漠然と押し寄せる将来の不安。身近に頼れる大人はいません。改めて、一人であることを痛感した瞬間を語ってくれました。

施設で暮らす子ども達は日本で約30,000人。虐待、経済的な理由、親の病気などさまざまな事情で家族と離れて暮らしています。原則、18歳までに自立して児童養護施設を退所し、自活しなければなりません。毎年1000人以上が退所します。そのうち大学に進学するのは約2割。もちろん、大学に進学することがすべてではありません。しかし、全国の大学進学率と比べると圧倒的に低いです。身近に頼れる大人がいないため、大学進学できる学力があっても経済的理由で断念する子どもも多いのです。

社会に巣立っていく子ども達のために何ができるのでしょうか。一体、どんな支援をしたらいいのだろうか。ここ数年、施設退所者向けの支援の動きは広がりつつあります。奨学金を援助するNPO法人があります。そこで主催する勉強会で当事者に質問することができました。

―どんな支援があったら嬉しいですか。

「運転免許ですね」

「18歳以上、高校卒業以上、普通免許取得」。これはハローワークの最低求人条件です。就職して自立するために免許が必要でも費用が捻出できず、取得が難しいのです。

佐賀県では、児童養護施設の入所者に対する支援を自動車学校と連携しています。自己負担なしで運転免許が取得できるように取り組んでいるのです。このように国も施設退所者の支援強化策として、運転免許などの取得についての金銭的助成があってもいいのではないでしょうか。当事者目線で考えると、有効な支援がみえてきます。

 

参考記事:13日付 読売新聞朝刊(東京12版)17面「住まい、就職 相談できる場」