「たずな騒動」を教訓に

 「今から24時間限定で『フォロー、メンション』してくれた方全員に 『3万円』 プレゼントします」

新年早々、筆者がインスタグラムを開くと、こんな謳い文句が記された画像が大量に投稿されていた。

 これはたずな氏なる人物が「お年玉企画」として打った企画であり、氏のインスタグラムのアカウントをフォローし、「@ユーザー名」の文字スタンプを作って画像にはりつける「メンション」をすれば、3万円が貰えるといったものであった。

たずな氏のインスタグラムのストーリー。

 

 全く素性のわからない人物、「起業家」「投資家」とでも言えばいいのか。そんな人物をフォロー、メンションするだけで3万円が貰える──。

 そんなうまい話、あるわけないやろ!

 そう突っ込みたくなるのが普通であろう。しかし、少なからぬ筆者の友人たちは嬉々として、たずな氏をフォロー、メンションし、3万円を懇願していたのであった。

 フォロワーは2日午前11時の時点で40万人を超えていた。その半分が「お年玉企画」に参加していると見積もっても、支払い金額は60億円となる。実業家・前澤友作氏の「お年玉企画」でさえ総額10億円である。それをゆうに超える巨額を、無名のたずな氏が支払えるか否かは常識的に考えてもわかるはずであろう。

 仮に金銭面での支払い能力があったとしても、膨大に膨れ上がった参加者に対して、どういった手段で3万円を配るのか。また、支払われたとしても、出所不明の3万円を何ら疑うことなく受け取る姿勢は如何なものなのだろうか。

 この「たずな騒動」の顛末であるが、企画に参加した友人によると結局、3万円は貰えず、たずな氏から「3万円が入る禁断の方法」なるPDFが送られてきたそうである。

 初詣、新年会、お年玉、初売り──。

正月の浮き足立った雰囲気が、友人たちを怪しすぎる「お年玉企画」へ駆り立てていったのかもしれない。

2020年はオリンピックイヤーであり、この比ではないような浮き足立った空気が日本に充満することは間違いない。そのような「なんとなくいい2020年」を迎えた筆者ら日本人は、浮わついた気分に飲み込まれることなく、常識をもとに判断し、日常を過ごしていく心構えが必要だろう。「お年玉企画」に踊らされていた友人を見てそう思った次第である。

参考記事:

3日付 読売新聞朝刊(神戸13版)16、17面「令和を拓く TOKYO2020 映し出す未来」