【特集】令和が食品ロスの出ない時代になるために

黄桃の缶詰が79%オフの46円。フランスの老舗「マルキーズ」のエスカルゴチョコが50%オフの972円。店内の6割から7割が、賞味期限に関する理由で販売出来なくなった商品です。ラベルが傷んでいるお茶や少しへこんだ紙パックのジュースなども並んでいます。

26日。ルピシア ボンマルシェ代官山店にて筆者撮影。

ここは、代官山にある「ルピシア ボンマルシェ」。捨てられてしまう商品を買い取って、ボンマルシェ(フランス語でお買い得)な価格で提供しています。開店したのは、まだ「食品ロス」という言葉が浸透していなかった11年前。店を運営するルピシアグルマンの相談役である中江氏は次のように話します。

ルピシアはお茶の専門店。まだ美味しく飲めるにもかかわらず、3分の1ルールにより工場に戻して破棄しなければならないお茶を救いたい。その思いから、まずはお茶とクッキーなどを集めて始めました。

  26日。ルピシア ボンマルシェ代官山店にて筆者撮影。

今では、全国に13店を展開し、毎週末には通信販売も手掛けています。茶菓子だけではなく、鍋つゆやドレッシングなども取り扱うようになりました。昨年からは、代官山店限定ですが、賞味期限切れの商品もスタッフが試食した後に一律20円で販売。

無料に近い感覚で手に取ってもらいたい。食品ロス問題に興味を持って欲しい。

そう考えて、期限切れまで取り扱うことにしたといいます。

現在、食べられるのに廃棄される食品は国内だけで年間約643万トン。飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量の1.7倍に相当する量です。大量廃棄を受け、10月には食品ロス削減推進法が施行。新聞でも取り上げられる機会が増えました。「フードバンク」や「3分の1ルール」なども馴染みのものになってきたのではないでしょうか。

「ようやくか」。食品ロスへの関心の高まりを見て、事業者からはこのような声も聞こえてきます。「ロスは損失になる。以前からずっと問題視してきた」。筆者の地元のサンドイッチ屋では、少しでも廃棄を減らすために、食べ残しの持ち帰りを推進するドギーバック運動に参加しています。

AIなどデジタル技術を駆使し、解決を図る企業も。NTTと三菱商事は、物流・小売業の効率化を支援するために包括提携する方針を固めました。小売店に必要な食材を適切な時期に納入することで、食品ロスの削減を目指します。

このように企業が本格的に取り組むなか、次に動くべきは消費者です。残念ながら、若者に人気のタピオカでは、写真だけ撮って捨てる問題が起きてきています。食べる気もないのにSNSに投稿するためだけに買うなどということはあってはなりません。あくまで食べられる範囲でインスタ映えは楽しむべきです。

また期限切れだからとすぐに捨ててはいませんか。消費期限と違い、賞味期限ですと「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」であるため、過ぎてしまっても問題はありません。消費期限なのか賞味期限なのか、まずは確認しましょう。

豊かになって、どこか食べ物へのありがたみが薄まっている今日この頃。令和がロスの出ない時代となるように。食品の行方に関心が高まった今こそ、恵みに改めて感謝し行動することが求められています。

参考記事

日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞 食品ロス関連記事

参考資料

ルピシア ボンマルシェHP

https://www.lupicia.com/bonmarche/

消費者庁HP「食品ロスについて知る・学ぶ」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/

農林水産省HP「消費期限と賞味期限」

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html

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