変わる「おせち」

「おせち」は江戸時代から続く、伝統の正月料理です。少し前までは、大人数で囲むものでした。それが今では個食おせちが人気を博しています。そう思ったのは、「おせち」の予約を受けるアルバイトをしたことがきっかけです。今年の10月から1か月ほどやっていました。元日に食べるおせちをわざわざその時期に予約するなんて、さぞかし豪勢なものを注文するのかと考えていましたが、その思い込みはすぐに覆されました。

一人分のもの、一人分が重なった二人前が多く注文されていました。理由を尋ねると、多くは夫婦だけだから、娘と母の二人暮らしだからといったものでした。他には、健康を意識して塩分控えめのものを頼みたいと話すお客様も。この背景には、核家族化が進んでいること、おせちを頼む人の世代が高齢化していることがあげられると思います。

今朝の朝日新聞朝刊には、「シェアおせち」が紹介されていました。一人が2、3品を持ち寄り、それを複数の人の間で交換し合うというものです。「シェア○○」という言い回しはよく聞きますが、ついにおせちまでと思ってしまいました。個でおせちを楽しむのではなく、人との関わりを持てるのがいいところでしょうか。

記事のなかで、シェアおせちを始めた市川さんは話しています。「おせちを作りたいと思っても、毎日が慌ただしくハードルが高すぎる」。仕事や、家事に追われる中、お正月の風物詩にとりかかる時間をつくるのは、現代の女性には難しいことです。

おせちの作り方は、昭和初期に女学校での教育により全国に広まりました。本来、家庭で作られていたものが、高級おせち、コンビニの100円おせち、ついにはシェアおせちと時代とともにその姿を変えています。女性の社会の中での立ち位置が変わっていることを映しているようです。

参考記事:
今日付 朝日新聞朝刊 (13S版) (19面) (生活) 「おせち」一人でがんばらずに…