災害に強いまちづくりのヒントを宮城県丸森町で見た

車が土に埋まって上半分だけしか見えない。家の一階に土砂が流れ込んでいる。台風19号から2か月経った宮城県丸森町で目に飛び込んできた光景だ。大学が主催するボランティアに参加し、25日から3日間、丸森町に来ている。

家の1階に土砂が流れ込んでいる。25日筆者撮影。

 

車が埋まっている。25日筆者撮影。

町の中心部から車で30分ほど、宮城県の南部に位置する筆甫(ひっぽ)地区がある。そこでは、住民全員が自治運営に携わっていた。台風19号のときには自ら重機を操って、寸断された道路を4日で復旧させたそうだ。なぜこんなことができるのか。丸森町の役場が中心ではなく、筆甫地区のまちづくりセンターが中心となって運営しているからだ。

驚いたのは、まちの人同士がまるで家族のように接していることだ。台風19号のあと、まちづくりセンターの職員が、240世帯を戸別訪問し、住民1人ごとの健康をチェックした。不安はあるか。相談相手がいるか。薬がいつ切れるか、など20項目以上の質問をしている。必要な支援を届けるために、事細かに把握しているそうだ。

また、台風が襲ってきたときに、心配だからと隣人の様子を見に行った人、一人暮らしの人に「危ないから一緒にいよう」と声をかけ、自宅に招いていた人もいた。普段から近所の人と話す機会が多いからこそである。自治体と住民との関係だけが密なだけでなく、住民同士も密だと思った。

この筆甫地区の地域のあり方は、災害に強いまちづくりを全国各地で進めるヒントになると思う。

自分の住む地域のことについて考えてみた。私は東京に住んでいる。隣の家と人とは会ったら挨拶を交わす程度で、会話を交わすことはあまりない。でも、筆甫地区のような密度の高い関係を隣同士でなら築くことができるのではないか。地域全体は無理だとしても。家に帰ったら、まずは近所の人との挨拶を心がけ、そこから会話につなげることにチャレンジしたい。

宮城県丸森町は、まだまだ手助けが必要だ。自宅の1階が浸水したため、2階で生活している人もいるし、避難所からようやく仮設住宅に移り新しい生活を始める人もいる。これからは、ハード面、ソフト面の双方で支援が必要になってくる。

明日は浸水被害を受けたお宅の泥かきをする。もし時間があれば、ぜひ丸森町に訪れて、何かできることをしてみてほしい。

私はこの町が大好きになった。

 

参考記事

26日日本経済新聞デジタル地域経済「宮城・丸森町子どものケア、連携の輪」