【特集】クルマの未来や如何に

自動車メーカー各社が自慢の技術を披露する東京モーターショー2019が24日、東京・江東区の東京ビッグサイトで開幕しました。

=ホンダの新型フィット。筆者撮影

短期的な注目点と言えば、ホンダが新型フィットを世界で初めて公開したことでしょう。当初、ホンダは年内の発売を見込んでおりましたが、部品調達の不具合により来年2月ごろに延期する見通しです。新しい技術をふんだんに取り入れ、フロントシートには新世代「ボディスタビライジングシート」を採用し、上半身をしっかり包み揺れを低減しています。ホンダのブースは非常に明るく、ファミリー・若者向けのポップな雰囲気に仕上げていました。

一方、昨今の自動車市場は電気自動車(EV)なしには語れません。日本で最も早くEVを手掛けた日産自動車は、一昨年の東京モーターショーに引き続き新型リーフを売り込むほか、今回初めて軽自動車の規格に収めた試作車IMkを公開しました。現在、手放し運転を支える運転支援装置が使用できるのは高速道路ですが、それを主要な幹線道路にも広げてより街乗りを意識したコンセプトカーになっています。

=日産自動車のコンセプトカーの発表の様子。後ろに映るのはEVのリーフ。筆者撮影

また、今までEVに及び腰だったとされるトヨタは、軽自動車よりさらに小型の2人乗りEVを出展しています。来年後半の販売を見込んでおり、最高時速は60キロ、1回の充電で走れる航続距離は100キロ程度にとどまりますが、高齢者や運転に不慣れな人など「走りをそこまで追求しない人」をターゲットにしています。同時に、法人向けのモデルも提案し、短距離の営業での使用が想定されるなど、EVの細かな仕様が広がっているのを実感できます。

=マツダが世界で初めて公開した量産型EV・MX-30。筆者撮影

マツダも、初の量産EVであるMX-30を世界で初めて公開。来年からヨーロッパで販売する計画で、ドイツでの価格は日本円でおよそ400万円程度だそうです。航続距離は200キロ程度でやや物足りない感は否めません。

2回連続で東京モーターショーを訪れた筆者の感想は、大きく2つあります。

1つ目としては、前回(2017年)と比べた会場内の配置です。前回は出展している各社のブースはおおむねビッグサイトの建物内に集約されていましたが、今回はトヨタやダイハツ、三菱ふそうなど一部のコーナーがゆりかもめの隣駅である青海になっていました。

当然、歩いて行ける距離ではないので無料の連絡バスが運行されましたが、ビッグサイトから青海方面のバスには長蛇の列ができ、乗車するのに20~30分程度要しました。気軽に見に行くという観点では改善の余地がありそうです。

また、トヨタや日産、ホンダなど誰でも聞いたことのある大手自動車メーカーのブースはおおむね1階におかれた一方、自動車メーカーに部品を卸すデンソーやアイシン、ジェイテクトなど各社は軒並み2階にブースがあり、人の数は大きく減っていました。中には出展メーカーの職員が手持無沙汰にぶらぶらするところも。クルマとそれを支える部品で分野が違うのは理解できますが、多くの人にたくさん見てもらうためには、こちらも工夫の余地がありそうです。

=アイシングループのブース。筆者撮影

また、筆者が一番に感じたのは、やはりEVやAI(人工知能)を搭載した、従来のイメージのクルマから大きく変化している「時代の流れ」です。環境問題への関心が高まる中、排気ガスを出さないEVへシフトするのが現代であり、AIを搭載して自動運転機能により目的地までハンドルを握ることなく安全に移動するのが近い将来当たり前になるかもしれません。

しかし、それは「クルマ」なのでしょうか。自分でハンドルを握り、自分でアクセルを踏み、自分でブレーキを踏み...それらすべての過程を楽しむ「ファン」がいてこそ楽しいクルマが生まれるのではないでしょうか。このままでは、クルマが単なる移動手段になり、大した愛着がなくなってしまうのではないかと危惧します。

最先端の技術により乗客の安全性を高めることには当然異論はありません。ただ、技術によりドライバーがやることを淘汰していき、気づけばどのクルマも横並びになる、なんてことのないよう、「走る楽しみ」をいつまでも追求してほしいです。

一般公開は11月4日まで。クルマが好きな人も、ほとんど知らない人も、一度はクルマの今と将来をのぞいてみませんか。

参考記事:

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