トリック・オア・トリートよりもルール・オア・ペナルティー

日本人がハロウィーンを楽しむようになったのはいつからでしょうか。少なくとも、筆者が幼かった頃には話題にものぼらなかったような気がします。

さて、「ハロウィーン」と言われて思い浮かべるもの。私が真っ先に連想するのは、カボチャのランタンでも甘いお菓子でもありません。毎年報道で目にする、仮装した人でにぎわう夜の渋谷とゴミで汚れた翌朝の渋谷です。

昨年、軽トラックが横転させられるなど悪質な事件が発生し、逮捕者が続出する事態となりました。街中にはゴミが散乱し、目も当てられない有様です。ここ数年の騒ぎは度を超えています。

そんな状況から今年6月、渋谷区では渋谷駅周辺の路上や公園での飲酒を禁止する条例が成立しました。ハロウィーン前の週末にあたる25日〜27日翌午前0時には、スクランブル交差点やセンター街周辺が路上飲酒禁止の対象エリアとなり、同区域にある店舗でも酒類の販売が自粛されました。当日31日の午後6時〜翌朝5時までも同様の措置が取られるようです。

さらには、区の職員や民間の警備員、警視庁の機動隊員らも配置され、多くの人たちが集まった渋谷駅一帯に厳重な警戒態勢が敷かれました。

このような対策が功を奏したのか、先週末の渋谷で目立ったトラブルはなし。ゴミ拾いをしていたボランティアたちも、「ゴミの量は昨年よりも少ない」と言っていたようです。

 

筆者が留学していたカナダ・トロントでは、ハロウィーンに限らず、普段から屋外での飲酒が法律で禁止されていました。桜の咲く公園や真夏のビーチでさえ許されないのは、なんだか物足りなさを覚えるものです。「日本はどこでもお酒が飲めて幸せだ」と心の底から感じました。

ですが今回、渋谷でも限定的とはいえ飲酒が禁止されました。ルールを守らない者に楽しむ権利はないということです。楽しむ場から楽しみの種が消えてしまうのは、寂しいことです。

今回、一定の効果があったとはいえ、お酒がなくても騒ぐ人や逸脱した行為に出る人が現れないとは限りません。近隣住民への騒音問題や依然として残るゴミ問題には、今後も対応していく必要があります。状況によっては、酒だけでなく他のことにも制限がかかるようになるかもしれません。

他人に迷惑をかけず、危害を加えない方が気持ちよく楽しめるのに。一部の人たちのせいで、ルールを守っていた他の人たちも楽しみを失うことになるのです。参加者には、ぜひ「ルール・オア・ペナルティ」をわきまえていただきたい。

さあ、ハロウィーン本番の31日はどうなることでしょう。

 

 

参考記事

28日付 朝日新聞朝刊(東京14版)25面(東京)「ハロウィーン禁酒条例 効果は」

同日付 読売新聞朝刊(東京14版)27面(地域)「ハロウィーン 混乱少なく」