無職の専業主婦なんていない

先月上旬からネット上で話題になっている記事があります。ウェブ雑誌「マネーポストWEB」で掲載された「働く女性の声を受け『無職の専業主婦』の年金半額案も検討される」です。政府が第3号被保険者の縮小を閣議決定し、厚生年金加入要件を緩和したことを伝える内容でしたが、記事の書き方に問題があったようです。筆者もどのようなものか気になって読みましたが、違和感を覚えました。

本日のあらたにすではこの「違和感」を皆さんと共有するとともにその解決策を探ってみたいと思います。参考文献に記事のURLも載せているので目を通してみると良いかもしれません。

 

まず内容を確認しましょう。気になったのは二文。以下の文章です。

⓵現在、夫の厚生年金に加入し、年金保険料を支払わずに基礎年金をもらうことができる「第3号被保険者」の妻は約870万人いる。

 

②第3号については共稼ぎの妻や働く独身女性などから「保険料を負担せずに年金受給は不公平」という不満が根強くあり、政府は男女共同参画基本計画で〈第3号被保険者を縮小していく〉と閣議決定し、国策として妻たちからなんとかして保険料を徴収する作戦を進めている。

 

筆者は⓵「もらうことができる」と②「妻たちからなんとかして」という言葉の使いまわしに納得がいきませんでした。

このイライラはどこから来るのだろうと考えてみた結果、書き手の価値観にあるのではないかと思い至りました。想像にしかすぎませんが、この文章の書き手は男性だと推測しています。「女性かもしれない」との反論が返ってきそうですが、私には男性が書いたとしか思えないのです。

⓵だけを見ると、専業主婦の妻を養ってあげているという男性の一種の優越感を感じます。「もらうことができる」だなんて家事や育児をこなしている女性を侮辱しています。そして、②では「不公平」という点について、書き手が負うべき立証責任を共稼ぎの妻や働く独身女性に転嫁していませんか。

何よりこの記事のタイトルにも入っている「専業主婦」が価値観を表しています。会社で働かず、家で家事や育児に励むのは女性だけではありません。「専業主夫」という言葉がある通り、男性もまた第3号被保険者になる時代です。

「無職」という単語にも異論があります。筆者の身近で家事や育児に対する評価が低いなと感じる場面が多々あります。「自分は仕事をしていた」、「おまえは買い物に行っていただけだろ」、「飯(めし)」。そういった言葉を聞くたびに、家庭のために頑張っている人たちは空しさを感じることでしょう。

買い物はトイレットペーパーやティッシュを補充するため。テーブルに座れば料理が出てくるなんて思わないでください。数時間前から支度をしているわけですから。無職だなんて思えません。

 

ではこのような価値観はどうすれば変わっていくのでしょうか。難しいことは言いません。自分でやってみてください

育児は無理にしても、家事は今日からでも出来ます。食器洗いや風呂掃除をして、一度荒れた自分の手を見てください。そこから変わっていくでしょう。

 

参考記事:

5月5日付マネーポストWEB「働く女性の声を受け『無職の専業主婦』の年金半額案も検討される」

https://www.news-postseven.com/archives/20190505_1366800.html

6月5日付朝日新聞夕刊5面「(もっと知りたい)家事のお値段:3 『内助の功』は評価されてきたの?」

6月3日付日本経済新聞 ダイバーシティ進化論「専業主婦の年金巡る記事に批判  女性分断 あおらないで 詩人・社会学者 水無田気流」