【特集】座談会「就活戦線異常アリ?」

明後日6月1日は経団連が定める企業の選考解禁日。

現在就活中の筆者の周りには、様々な事情を抱えた仲間がいる。3月に早々と内々定を取り学業とサークルに励む者。内々定は取れても本命の企業があるため就活を続ける者。現在も内々定が取れず就活に全力を尽くす者…。また、これから公務員試験や教育実習を控える者もいる。就活模様は十人十色だ。

就職情報大手のディスコが今月7日に発表した2020年春卒業予定の大学生・大学院生の内定率(内々定も含む)は51.1%(今月1日時点)。選考解禁1カ月前にして、既に半数の学生は就活に区切りをつけている。こうした早期化は、売り手市場とはいえ就活生に混乱をもたらすのではないかと、筆者は懸念している。

現状に対して学生たちはどのような思いを抱いているのか。あらたにすは今月24日、就活中のメンバー3名、来年や再来年に就活を控えるメンバー2名の計5名で座談会を開いた。学業と就活の両立、地方と都市の格差などで意見が相次いだ。

【座談会参加メンバー】
A(大学4年女子・内定獲得済み)
B(大学4年男子・就活中)
C(大学4年男子・就活中・筆者)
D(大学3年女子・来年就活予定)
E(大学3年女子・再来年就活予定)

〈留学を取るか、就活を取るか〉
C:経団連が解禁時期を撤廃する動きがあるけれども…

E:通年採用になるとすれば、留学を考える学生にとって、どの時期に帰ってきてもデメリットにならないので良いことだと思います。留学生にとっては前向きに考えることができるのでは。

A:私は留学期間と就活がかぶらないように、敢えて2年の春から半年間留学した。本当は交換留学制度を利用したかったけれど、就活を考えると時期が合わなかった。

D:企業によっては「インターン選考」があると聞いています。それを考えると実質3年生から就活が始まるのでしょうか…

C:私は「インターン選考なんてくそくらえ!」くらいの気持ちで、3年のうちに留学した。就活は4年になってからでもできるだろう、と。

一同:(笑)

〈学生の適性をどう見るか〉
E:私は再来年度に就活をする予定です。就活制度は整いつつあるのかなぁと思っています。むしろ面接が不安で…

C:面接はフェアな選考だと思う。でも少し改善しても良いのかなと思う。

B:と言うと?

C:この前のグループ面接で、面接官と学生が8人ずついて、質問に一人ずつ答えていく形だったのだけれど。最初に答える学生は答えを考える時間が少なくてしどろもどろになっちゃって。でも最後に答える学生は考える時間があったから、比較的落ち着いて答えられていた。あんまり人数が多いとフェアでない気がする。

A:私は面接が嫌いで(笑)。だから、実技試験重視のインターン選考は良かったと思っている。

D:やはりインターン選考ってあるんですね。

A:選考の種類が多ければ、人事は学生の色々な面を見ることができるし、学生側のチャンスも増えると思う。

E:私も実技試験重視のインターン選考は残して欲しいです。筆記や面接が苦手な人にとってありがたいですし。ただ、インターンは解禁時期よりも早く実施されているので「青田買い」の印象も拭えない。実施する時期などを見直しても良いのかなと思います。

B:インターン選考は面接の一問一答よりも適性を見てもらえると言える。ただ「絶対適性があるし受かるだろう」という人が落ちることもある。業界ごとに、その仕事に合った選考方法を考えて欲しい。

C:例えばタクシー運転手ならば「運転技術を見る」とか…?

B:うーん、それもまた違う気がするけれど…。

A.でも、適性を見てもらう機会が増えるのは良いことだと思う。

〈選考過程に飲酒は必要か?〉

A.選考過程では「懇親会」があった。

E.それって、何をするんですか?

A.居酒屋で砕けた感じで話し合ったり…。

C.選考過程に飲酒が必要なのか疑問に思う。友人は大手清掃会社の選考で「最終面接はお酒を交えながら話しましょう」と言われて動揺していた。

E:私はお酒を全く飲まないのですが。

A.飲まない人でも酒席の反応を見ていると思う。でも、飲めない人にプレッシャーをかけるのは良くない。

▲選考過程で社員と酒を交わす場面もある(※画像はイメージです)

D:お酒の話も出ましたけれど、選考過程で企業との上下関係って感じましたか?就活生って、どういう姿勢で就活に臨めば良いのでしょうか?

C:最初に心得ておきたいのは、決して「主従関係ではない」ということ。時には祖父母と同世代の方を前にして面接に臨むこともある。そういう時は少し身構えてしまうこともあるけれど、会社側としても何億円もの生涯賃金を払う人を決めるのだから、生半可な気持ちではないはず。互いに決断を求められているわけだから、「対等な関係」と言えるのではないか。

A:私もそう思う。何だかんだ言って人手不足だから、お客様のように対応されたこともあった。選考の時お菓子を出されたりとか…。会社のカラーは面接でわかる。上下関係が厳しいところは選考過程でも伝わってくる。

C:友人は役員面接で名前やESの内容で下品ないじり方をされたらしい。世代間ギャップというか、「緊張をほぐす」のと「いじり」を間違えている例だと思う。

A:感覚のズレみたいなのはあると思う。ただ社会人になる上で理不尽な目に遭うのは仕方がないと思う。パワハラやセクハラは嫌だけれど、価値観の合わない人は少なからずいるし、いちいち言っていたらきりがない気がする。

C:だとすれば、もうちょっと就活弱者に手を差し伸べて欲しい。

A:就活弱者とは?

C:個々の人間性はあるとしても、情報入手の手段に差はある。例えば地方と都市の格差。地方では受験できる企業も限られるし、交通費も馬鹿にならない。実際に地方企業を受験しに行くと、人事担当や地元の学生は「首都圏の選考は早すぎてついていけない」「地方では都市部の学生ほど働き口の選択肢が多くないし、説明会も頻繁にあるわけではない」という声を聞く。こういう就活弱者の存在を社会はどれほど認識しているのか。

B:地方から東京の例もあるが、東京から地方へ行く人が少ないのも含めて、東京一極集中に原因がありそう。自分も地方企業を受けているけれど、わざわざ東京で面接をする会社が多いように感じた。「地方対東京」の構図が出来上がっている以上、弱者を解消することは難しい。

A:就活に限った話じゃないけどね。最近ではオンライン面接といったやり方もあるようだけれど。

B:オンライン説明会なら何度か受けました

D:ずっとパソコン越しにやるのですか?

B:そうそう。就活サイトを通じて、画面に映像やスライドの内容が表示される仕組みが多い。リアルタイムで見ている人の質問やコメントが横に表示されるところもあった。

C:都市と地方の格差解消で言えば、地方へ選考を受けに行く際に、自治体が交通費を負担してくれる制度もあった。

一同:へぇー

A:県が出してくれるの?

C:県とか、市町村レベルで出してくれるところもある。

B: 自分もその制度を使ったけれど、人事の人が勧めてくれて初めて知った。やってない所も多いのでは?

C: やっているところのほうが少数で(参照:25日付あらたにす「【特集】破産寸前 就活生は言いたい」)、就活で交通費が負担になっている人を思えば、国が補助を出すのも一つの策かも。移動の多い身としては、深夜バスはとても重宝しているので、バス会社が就活生用の臨時便を設けてくれると助かる。身体がバキバキになるけれど。

B: 自治体が交通費補助を出すのは、自分のところの住民になってほしいからかと。人口減で税収が減っていますし。

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