【特集】破産寸前 就活生は言いたい

筆者が就職活動を始めて早3カ月が経とうとしている。就活情報大手のマイナビによると、来春卒業の大学生や大学院生の4月下旬時点の内々定率は39.3%。既に5人に2人は社会人への切符を手にしたらしい。かつての就職氷河期とは打って変わり、今は売り手市場に沸く。ところが、特定の業界に狙いを定めている筆者にはまだ内定が出ていない。体重は就活開始前と比べて7キロ落ちた。ベルトをきつく締める日々が続く。

問題は体重が落ちたことではない。就活での出費である。特に交通費の出費が大きい。ここで、筆者のある1週間をご覧いただきたい。

【月曜日】都内で筆記試験。その後大学の授業に出席したのち夜行バスで神戸へ。

【火曜日】神戸市内で書類提出。高速バスで広島へ。広島市内の説明会に出席し、新幹線で東京に戻る。就活関係の集会に出席して、夜行バスで新潟へ。

【水曜日】新潟市内で面接。夜行バスで東京に戻る。

【木曜日】大学の授業に出席。

【金曜日】翌日の試験勉強とアルバイト。

ざっと計算したところ、この1週間でも交通費だけで3万円近くを費やした。他に生活費や家賃もあるため、バイト代だけでは賄いきれない。止むを得ずカード払いや、実家に支援を求めるなどして、どうにかやりくりしている。

新幹線を使う余裕があるうちはまだ良かった。最近となると、もっぱらバス移動が続く。7、8時間座りっぱなしのため、身体の節々に痛みを抱えながら面接に臨むことになる。寝不足で表情が冴えず、人事担当者から「大丈夫か?」と声をかけられたことも。「新幹線や飛行機で楽々移動ができれば…」と何度考えたことだろう。

▲例えば東北新幹線の東京~仙台間は学割料金で9000円強。例えば筆者のバイト代は月8万円。新幹線は頻繁に利用できない(東京駅で筆者撮影)

地方に魅力を感じて就職を考える学生にとって、交通費は死活問題なのだ。正直「時間とお金をかけて地方に行くくらいなら都内で就職活動を進めてしまいたい」との考えがチラつくこともある。地方へ人の流れを作るにあたり、「交通費問題」は意外と大きな問題なのではないか。

自治体によっては就活に伴う交通費の援助がある。例えば新潟県は、県内で就職活動をする学生に交通費と宿泊費を補助している。上限額は1万円で、年度内に3回まで申請できる。筆者もこの制度を利用してみることにした。

ところが、思ったよりも手続きが煩雑だった。書類を手に入れ、受験した企業からサインをもらう。その後、各項目を記入し、大学の学生課に提出する。これで終わりかと思いきや「新潟県庁への提出は各自で」とのことで、結局郵送代も自己負担になる。他県民が新潟県民の血税を頂戴するのだから文句は言えないが…。

▲新潟県の交通費助成申請書。

この補助制度は多くの県にありそうなものだが、県域レベルで補助制度を設けているのは十数県に止まる。東北地方は青森・山形・宮城・福島各県が交通費と宿泊費を助成しているほか、岩手・秋田両県も市町村が独自の制度を設けている。他方、人口の多い関東や近畿では助成のケースは比較的少ない。また、制度はあっても就活支援団体の登録が必要なケースでは手間がかかる。補助内容も地域ごとに異なるため、複数県にまたがって動く就活生にとっては混乱が生じる恐れがある。

「地方創生」が叫ばれて久しい。地方へ人材が行きわたるためには、支援策を充実させる必要がある。欲を言えば分かりやすくて手間のかからないものが良い。例えば厚生労働省の委託事業「LO活プロジェクト」は、都道府県別の就活支援情報をウェブ上で提供している。こんなプラットフォームが整っている以上、自治体が活用しない手はない。

「就活で甘ったれるな」と叱られそうだが、切実な願いなのだ。この記事を書く今も、首の痛みに悩まされている。明日の夜もまた、夜行バスに乗る。

どうか、就活生に慈悲を。

参考記事:
24日付朝日新聞デジタル「『内々定』が取り消されたら… 知らないと怖い就活知識」
22日付朝日新聞デジタル「売り手市場、囲い込み戦略 20年春の新卒採用、企業の動きは」
10日付日本経済新聞電子版「大卒内定率39%、理系は半数超え 民間調べ」
参考文献:
厚生労働省委託事業「LO活」 https://local-syukatsu.mhlw.go.jp/
新潟県「県内で就職活動等を行うU・Iターン学生への交通費及び宿泊費の補助を行います」
http://www.pref.niigata.lg.jp/roseikoyo/1356841151769.html

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