ネットから見つめるセンター試験

「美しい姫に近づきたくて美少女に化けた狐の話」

漫画やアニメの話ではありません。今年のセンター試験の問題内容です。

大学入試センター試験が1月19日から20日、全国700近くの会場で実施され、約58万人の志願者が試験に挑みました。センター試験は前身の「共通一次」こと国公立大学共通第一次学力試験が1979年に始まり、今年で40年続く制度です。私大に通う筆者も、受験生の時はセンター試験の結果を使ういわゆる「センター利用入試」で入学しました。

平成最後のセンター試験とのことで、新聞各紙も大きく取り上げました。23日付の日経新聞朝刊の1面コラム「春秋」では、「平成の出来事が初めて「日本史」で出題された」ことについて書かれています。ニュースで報じられたことが、世界史や日本史的な意味を持つことにスケールの大きさを感じます。

近年の傾向として、試験終了後にその問題内容がネットで話題となることがあります。SNSをよく使う若者世代と、受験者層の年代が被るということもあり、問題文から派生した創作話が生まれることも。冒頭の話は国語の古文で、御伽草子のひとつ「玉水物語」から出題されたものです。この他にも、21日「摩訶不思議! 今年もやってくれました」にあるように、リスニング試験で奇抜なキャラクターが登場するなど、ある意味話題に富んだセンター試験でした。

SNSでは問題以外の内容も話題になります。ある高校生はツイッターで、センター入試の試験監督が「会社リストラされた暇なおじさんたち」なのではないかと投稿し、監督経験のある大学教員から否定の返信を受けていました。国の管轄団体が運営しているだけに、監督業務の裏側はあまり知られていない背景もあるようです。

一方、同じ国が関わる国家試験では、民間会社が業務を受託・代行する場合があります。実は筆者も監督や本部運営のアルバイトをしています。ルールが絶妙に異なることから、年に数回しかない試験ではマニュアルが離せません。おそらく、先の高校生は大学生が模擬試験の監督をしていたので、センター試験でも臨時に採用されていると感じたのでしょう。とある大学教員の方は「緊張ばかり長くて自由がない仕事をやらされるとオーラが消失する」。実際に経験していないのでわかりませんが、センター試験の監督業務はかなり過酷だそうです。「医科大で医師が監督している」のはいかがなものかとの意見もあります。

国家試験でできて、センター試験でできない運営の民間委託。コストが掛かりすぎるので仕方がないとの意見もありますが、コストの掛かる仕事を、安価な日当で研究者らにさせるのも筋が違うように思います。平成が終わると来年、いよいよセンター試験は最終回を迎えます。新たな共通テストで改善を望みたいところです。

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23日付 日本経済新聞朝刊(東京14版)1面「春秋」