五輪のためだけ?サマータイム導入検討

欧州で幅広く導入されているサマータイム。日照時間の長い夏の一定期間、時計の針を1~2時間進める制度です。つまり、これまでの朝5時が7時になり、起きだして仕事にとりかかる時刻になってしまう仕組みです。「早寝早起きは、健康、富裕、賢明のもとである」という格言を残したアメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンが、エッセーの中で太陽の光を利用した生活をしようと提案したことが起源と言われています。

安倍首相は7日、全国一律でのサマータイムの導入について、その是非を検討するよう自民党に指示しました。大会組織委員会の森氏が2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策を進める狙いで提案し、「地球環境をどう存続していくのかという大きな見地で五輪を最大限のレガシーにしてほしい」と話しています。しかし政府内では反発が根強く、菅官房長官は「国民生活にも大きな影響が生じる」と慎重な姿勢を示しました。

社会に出ていない学生の目線でしか考えられませんが、導入自体には賛成です。「災害級」ともいわれる酷暑が来年以降も続くと考えれば、涼しい朝を有効活用するための手段は重要になってくるのではないでしょうか。また、省エネや温暖化ガス削減につながるとも考えられますし、余暇時間が増えれば消費の拡大も見込めます。

11年の福島原発事故の後、節電対策の一環としてすでに導入している企業もあります。ユニ・チャームは始業時間を一時間早い8時に繰り上げたところ、「早く帰宅するため効率的に仕事をするという意識が生まれ、残業時間が大幅に減った」と記事に掲載されていました。

一方で、課題は山積みです。妨げになりそうな最も大きな要因は、導入に伴うコストです。コンピュータのプログラムや交通機関のダイヤ変更などが必要となり、大きな混乱が生じると考えられます。移行する時の列車ダイヤの編成など、慣れていない日本では大騒ぎでしょう。

労働時間の長期化を懸念する声も多くあります。かつて日本でも戦後間もない期間に導入されたことがあります。しかし、結果的に労働時間の延長をもたらしたため、廃止されました。効果を高めるには、現在進められている働き方改革と連動した対策を打ち出すことがポイントとなりそうです。

経済活動や日常生活への影響が大きいからこそ、五輪期間に限っての導入やその期間に間に合わせるような検討作業には疑問を抱いています。東京五輪のためだけではなく、数多くの視点から時間をかけて議論を深めていきたいですね。

 

参考記事:各紙「サマータイム検討」関連面