――逆にデメリットはなんでしょうか。
吉田:高校生が明確に大人になってしまうのはまずいと思います。契約できるのが18歳となると、親の同意を得られなくても奨学金を申請できるようになる。高校を出たばかりの人間が一筆書いただけで何百万ものお金を借りられるというのは、ちょっと不安ですね。
猪股:成人式が受験シーズンと重なると、成人式に参加する人が減り、振袖業界が大打撃を受ける可能性があるようです。しかも、年齢を下げる年の19歳と20歳の成人式は、18歳と同時に開催されることになります。
田端:成人式が1月である必要はないから、その年だけは年齢ごとに時期をわけるというのもできそうですけどね。高校を卒業したあと3月に成人式を行うとか。GWやお盆に開催している地域もあるようですね。
猪股:地方では、新成人が帰省する時期に合わせているようです。風土も関係しているようです。新潟では積雪のため冬にはできないと聞いたことがあります。
吉田:19歳の時に手術をしたのですが、同意書が必要でした。書類へサインすれば、「手術への同意」に責任を持つ必要がある。当時は未成年だったので親に署名してもらいました。自分の命に関わることや重要な意思決定に、経済的にも自立してない学生の身分で責任を持つのはなかなか難しい。あの時、未成年で良かったと思いました。
――成人年齢の引き下げは必要でしょうか。
齊藤:現時点では、必要ないと思います。自分が大学生で、働いていないために普段不便さを感じることがないからかな。
猪股:そもそも成人年齢を設ける必要ってあるんでしょうか。便宜を図るために必要だという意見もわかりますが、年齢規制すべきことだけ各々の法整備をすれば十分です。
人によって事情も異なります。先ほど挙げたパスポートの件でも、海外には行かないし日本にいるから関係ないって人もいる。お酒やタバコに関しては、大学入学と同時に始める人が多く、二十歳以上という法律も形骸化しています。
成人して法律上何が変わるのか、国民に周知されていないのも問題です。実感があることといえば、お酒が堂々と飲めるようになることと、年金の請求が来るようになることくらいですよね。
吉田:確かに、自分の身の回りの生活に関することで20歳以下で法律に関係するものって、悪い大人に騙されることぐらいですね。実際、バイトぐらいしか契約書を書くことってないですよね。
吉田:成人になってからできることは、本来は国民全員に与えられている権利です。でも、子どもにはまだ判断能力や責任能力がないから、法律で保護すべき対象として成人年齢という基準を設けているわけです。
相澤:いっそのこと、成人年齢を選択制にするとかどうでしょう。例えば、18歳〜22歳の間で自分が自立できそうだと判断した時に成人するとか。成人すると年金の支払い義務がありますが、学生の間は猶予する人も多いようです。各々の事情に合わせて成人年齢を決めれば、年金を猶予する必要がなくなります。
吉田:成人宣言はアイデアとして面白いですね。成人するということは責任を負うことも同時に意味しますから、「私は大人です」と言ったタイミングで成人すれば、それは責任を負うという意思表示にもなる。
――18歳という年齢は妥当でしょうか。
吉田:世界的に見ても、多くの国で成人年齢は18歳ですね。
猪股:成人年齢を海外基準に合わせる必要はあるのでしょうか。韓国では19歳、北朝鮮では17歳ですよ。隣の国もそれぞれ違う。
吉田:そもそも現行の成人年齢が20歳なのは、明治時代に諸外国と比較しつつ当時の日本の平均年齢を考慮した結果だそうです。自民党の考え方的に、現行の成人年齢は古いんでしょうね。
相澤:童謡「赤とんぼ」の歌詞には、「十五で 姐やは 嫁にゆき」というのがありますね。明治時代と現代では、年齢に対する感覚がかなり違います。
吉田:子どもの権利条約では、児童(こども)を18歳以下としています。
田端:青少年が18歳、成人が20歳ということは、18〜20歳の間は空白なんですか。
吉田:「青少年」という言葉が性犯罪について語られる際の一つの目安になることが多い。例えば、10時以降の出歩きを禁止するのもその一つです。
猪股:「18禁」っていう言葉がありますね。