不安が不安を呼ぶ患者

厚生労働省は27日、病気の診断に欠かせない放射線検査による医療被曝(ひばく)を減らすため、患者の被ばく線量の記録を義務付ける方針を決めました。

放射線検査といえば代表的なものにCT(コンピューター断層撮影)があります。筆者もこの検査を受けました。熱を出したときのことです。季節の変わり目ということで風邪を引いたかと思い市販薬を飲みましたが、熱は上がるばかりです。ついには喉の激痛で夜は一睡も出来ず。近所の耳鼻咽喉科に行くと、紹介状を書くからすぐに大病院へ行くよう指示され、入院騒ぎとなりました。

当初は「急性咽頭炎」と診断され1週間程度の入院で済むと医者に言われましたが、薬は全く効かずに病状は悪化する一方。ついには食道から口腔内にかけて潰瘍が現れ、食事はおろか唾を飲み込んだり寝たりすることすらできなくなりました。急きょCTで感染源を特定することになったのです。

生まれて初めての検査です。病気で衰弱しきっていたため、当初は被ばくなど全く気にしていませんでした。しかし、この記事を読んで「そういえば」と少し心配になったものです。

筆者は結局、CTのほかにもMRIや胃カメラを受けたものの原因は全く分からず、血液のがんやHIVも陰性。最終的に輸血を受けたことで回復に転じましたが、退院に3週間かかりました。ちなみに病名は断定できないままで、医者から「原因が特定できれば学会で発表できるレベル」と奇妙なお墨付きをいただきました。

病気を患った人というのは、程度の差はあれ不安な心理状況に置かれています。僕も「このまま声を失うのではないか」「輸血の結果、別の病気にならないか」など不安が不安を呼ぶ毎日でした。そうした患者の心労を和らげるためにも、医療機関は今回の方針を受けて患者への情報提供を積極的に行ってほしいものです。それに加え、CT自体の放射線被ばくも減ればいいですね。

皆さんも喉は大切に。

参考記事:

28日付 朝日新聞朝刊13面(総合) 「CT検査 記録義務へ」