親ってだあれ?

「お前なんか親じゃない!」

東京都の女性(44歳)が、不登校の長女からこんな言葉を浴びせられたそうです。

皆さんの中にも、思春期に親御さんにこのようなことを言ってしまった経験がある方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。「ウザい!」程度なら私も言いました。我が家の両親はそれを面白がって「反抗期だ!」とやたらめったらにからかわれたのですが、今日の朝刊に載った親子の場合はちょっと問題が複雑そうです。

上に挙げた女性とその娘さん。娘さんは小学校のころ、男子から「太っている」と言われたことがトラウマとなって拒食症になってしまったのだそう。クリニックでの診察を数回繰り返したのち、別の病院を紹介されました。紹介状に書かれた症状は生まれつきの脳機能障害である「発達障害」。

その後、紹介された病院で彼女らを担当した関谷医師によって発達障害は否定されました。

娘さんに発達障害の診断が下りてしまったのは、発達段階で起こる信頼関係の築き方の変化が、不登校などによってスムーズに行われなかったためだといいます。娘さんは中学では友人関係がうまくいかず不登校になり、母親である女性は応じることで娘を救いだせるのではないかと誤解してしまったそう。本来、発達の段階に沿って、子どもは密接な人間関係作りを親から友人などへシフトしていきます。友人の考え方など、親以外の価値観を知るうちに、自分の価値観を持つようになるのだとか。その部分がスムーズに移行できないと、小学校のころなどと同様に、親にだけ頼り、親子関係は幼児期のようになってしまいます。暴言や暴力はその延長。いわば、大きな子どもが力の限り甘えている状態です。

近年、発達障害や学習機能障害、自閉症などの脳機能障害の存在が知られてきました。そういった障害を持つ方々に対する理解が深まること自体はいいことなのですけれども、この娘さんのようによく調べられないまま発達障害とされてしまう方も増えてきているそうです。私自身、発達障害などに関する記事をあらたにすでも何度も取り上げ、その理解や考え方について意見をしてきましたが、そんな記事を書きながらも「障害って言ってもなぁ、どこからが病気なのかしら」と思うことは多くありました。

関谷医師は「発達の過程では誰しも積み残しがあり、完璧な人間はいない。問題が見つかったら、積み残した部分にアプローチすることが大事」と言います。

血のつながりはあっても他人なのが親。けれど子どもが育つためには、「親」という要因はかなり大きなものでもあって。その反面、親が干渉しすぎると、子どもの心はずっと子どものままなのです。親子って本当に不思議ですね。

参考記事:
3日付 読売新聞朝刊(大阪13版) 22面(くらし) 「思春期に健康な親離れ」