増税見送りは景気をよくするのか?

衆議院選挙が2日公示されました。安倍首相は2015年10月に予定していた消費税増税の先送りを国民に問う、という大義を掲げ解散に踏み切りました。消費増税先送りは消費にプラスだと判断され、株式市場は11月末大きく上昇しました。消費税の引き上げは近い将来に実施されるはずですが、増税はできるならば避けたいものです。しかし、日本の財政状況を考えれば税金は払った方が日本経済にプラスに働くかもしれません。

1日、アメリカ大手格付け会社のムーディーズが日本国債の格付けを1段階引き下げました。これにより日本国債の格付けは「A1」となり、「Aa3」の中国や韓国より格下となりました。消費増税の引き上げにより、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を2015年までに半減し、2020年には黒字化を達成するという目標の達成は困難となってしまいました。ムーディーズによれば財政再建の見通しが立たなくなったことが格下げの重要な理由のひとつだ、と発表がありました。国債のリスクが投資家から懸念されれば、利回りが上昇しそれに連動した住宅ローンの金利が上昇するなどの国内経済に悪影響が発生します。しかし、日本国債の大部分は国内投資家が占めており、また日銀が国債を買い支えている現状では利回りが急騰する可能性は高くはありません。そもそも今更格付けの変更が行われたところで財政再建の見通しが厳しいことは、安倍首相の増税先送りの発表時に見越されています。さらに問題であるのは日本財政の信用力がなくなると、同時に日本企業の信用力もなくなることが問題として表面化してしまうことです。日本の格下げの発表があった翌日2日、ムーディーズは三菱UFJ銀行や三井住友銀行といった邦銀の格下げを発表しました。格付けを引き下げられるとその企業に投資するリスクに応じて負債などの金利を引き上げなければならず、資金調達時に高い金利を求められます。近頃は金融緩和のおかげで企業は低い金利で資金を調達することができますが、将来金融緩和が終わりを迎えた時日本財政の健全化が進んでいなければ、資金調達のコストが重荷となり日本企業は国際競争力を失ってしまうかもしれません。一方、健全な財務状況を有している企業は日本という枠組みにとらわれず有利な資金調達が可能と捉えることも出来るので、各企業に日本国債暴落に備えた健全な財務活動のインセンティブを与え、競争力を高めた企業だけが生き残ることが出来るでしょう。

消費税増税の見送りはどう日本経済に影響を与えるか意見は様々です。さてどちらのシナリオが日本経済を成長させるでしょうか。みなさんの意見もお聞かせください。

参考記事

日本経済新聞 2日付朝刊 1面、2面 電子版速報「ムーディーズ、三菱UFJ銀や三井住友銀など「A1」に1段階格下げ」

朝日新聞 2日付朝刊 1面、3面

讀賣新聞 2日付朝刊 1面、9面