「応援したい!」気持ちはわかるけれど

東日本大震災から7年がたちます。

筆者は福島県浪江町を定期的に訪れ、まちづくりを目的とした学生団体を立ち上げました。今日のあらたにすは、そんないわゆる「被災者」ではないけれど「復興支援」を行ってきた自分自身を題材にして、「復興」について考えていきます。

初めて浪江町を訪れたのは2015年8月です。そのときはまだ、全町民が避難をしていました。それどころか、いつ避難指示が解除されるか、具体的な時期も決まっていませんでした。

一方で、町の復興のために活動している方々で下を向いている人はいませんでした。むしろ、これからどう町を盛り上げていくか、どこか楽しそうに話をしているのです。その姿を見て、「ここで少しでも力になりたい」という思いを抱き、浪江での活動を始めました。

まず取り組んだのは町のイメージを変えることです。当時、インターネットで「浪江町 今」と検索すると、商店街にイノシシが出没している画像がトップに出てきました。もちろん、それも当時は現実としてあったのかもしれません。しかし、それだけが浪江の「今」ではありません。だからこそ、復興がどのように、どれくらい進んでいるのかといった「今」も知ってもらう必要があると考えました。

そこで、東京の学生を集め、町の再生を一緒に考えるスタディツアーを実施しました。筆者は浪江で被災していないこともあり、震災前や震災で町がどうなったかということは参加者に伝えることができません。そのことを踏まえ、町や県、国がどのような復興計画を立てているかといった資料を作成し、客観的な事実を伝えることを心がけていました。一方、通う度に変化している町の様子をあらたにすで何度か紹介させていただきました。(支援の仕方を考える「死んだ町」の復活 など)今でも検索結果はそれほど変わっていませんが、ツアーに参加した学生、その学生がSNSに投稿したのを見た学生、と少しでも多くの人に違ったイメージを届けることができたのではないかと思っています。

復興が進んでいるかどうか。3月11日になると毎年多くの人が抱える疑問だと思います。ですが、それに対しての答えはないと思います。そもそも「復興」とは何か、そこから考えなければなりません。「応援する」ことも大事ですが「余計なおせっかい」は不必要です。支援し続けることは、自立を阻害する要因になりかねません。

今の浪江町は、避難指示が解除され、活気が出てきました。さらに、まちづくり会社も誕生したことで、復興が加速することでしょう。筆者の団体については、このような町の現状を踏まえ、今年限りで活動を終えることを検討しています。

本日の朝日新聞の1面では、

7年が経ち、インフラを中心にまちの姿が再興する一方、人口の流出に歯止めがかからない

と述べられています。しかし、東北地方に限らず、他県、特に都市部への人口流出は日本全国の地方で今まさに起こっている問題であり、「東日本大震災からの復興」という考え方では解決することはできないでしょう。

だからこそ、しっかりとデータを見てから復興のことを考えてほしいと、筆者は願っています。例えば、Yahoo!Japanが特集で掲載している「知るは応援になる」などを一度チェックしてみてください。これまでの印象が変わるのではないかと思います。

これからの3月11日は震災で犠牲となられた方々への追悼をするとともに、何が復興する上での問題なのか、何が今後の防災上の教訓になるのかをしっかりと見極める一日にしたいものです。

参考記事
11日付: 各紙震災復興関連記事