「死んだ町」の復活

  津波・地震による爪痕が今もなお残り、原発事故により目に見えない放射線と向き合っている福島県浪江町。そこはまだ全町民が住むことを許されていません。かつては漁業やサービス業でにぎわっていた町は、今復活のために動き出しています。

  今月から、町の一部区域で長期宿泊が始まりました。対象区域は5863世帯、1万5394人となっており、これまで長期宿泊が行われたた自治体を上回り最多となっています。今年の9月に約1か月間行われた宿泊に続き今回で2回目です。今回は、来年3月末を予定している避難指示解除に向けて、帰還の準備をすることが目的となっています。 そのほかにも、復興の拠点となっている町役場の敷地内には、食堂や雑貨店など10店舗が入った仮設商店街「まち・なみ・まるしぇ」をオープンさせています。

  一方で、長期宿泊を事前登録した住民は100世帯253人と、決して多い数字ではありません。震災から5年以上が経過し、避難先で新しい生活を始めている方、放射線への不安を抱いている方など、様々な事情がありますが、避難指示が解除された後すぐ帰ってくる方があまり多くはないことが予測されています。調査によると、町民全体のうち、将来町に「戻らないと決めている」人は町48%、一方で「すぐに・いずれ戻りたいと思っている」人は17.8%と、厳しい結果となっています。
  
  それでも、町の復活のために一歩ずつ進んでいます。昨年3月には常磐富岡ICから浪江ICが開通し、常磐自動車道か全線開通しました。来年春には常磐線浪江小高間が復旧し、交通網が復活します。避難指示の解除までには最低限必要なインフラ、公共サービスが復旧するよう今もなお動いています。

   地図上には存在するのに、人が生活していない、いわば「死んでいる」町。賑わいが返ってくるのはまだしばらく先になりそうです。それでも、完全に復興するのを見届けるのが、生き返らせるためにできることではないでしょうか。

今年5月に撮った写真です。空き巣対策のため警備員がいますが、道路は補修されています。

今年5月に撮った写真です。空き巣対策のため警備員がいますが、道路は補修されています。

参考記事

1日付 読売新聞朝刊 29面「浪江 長期宿泊きょうから」

浪江町HPhttp://www.town.namie.fukushima.jp/uploaded/life/12280_37485_misc.pdf

JR東日本https://www.jreast.co.jp/press/2015/20160307.pdf

NEXCOhttp://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/head_office/h26/1225/