ブラックフェイスと歴史 

小学生の頃、ほぼ毎週のように図書館に通っていました。気に入った本は何度も繰り返し読んだものです。中でも好きだったのは、伝記漫画。ナイチンゲールや織田信長など、世界中の偉人の生涯をわかりやすく知ることができ、夢中で読んでいました。

今日の「ひと」欄で紹介されているのは、ショーン・マイケル・ウィルソンさん(48)です。2004年から熊本市で暮らしています。英国生まれのウィルソンが原作を書いた漫画「西郷隆盛と西南戦争」がこの春、日本語と英語で出版されます。原作者として扱う主なテーマは日本史。「歴史は面白い。現在は過去から来ていることを知ってほしい」と語ります。

ここ数日、大みそかに放送されたテレビ番組「笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」の内容が物議を醸しています。問題になっているのは、お笑いコンビ「ダウンタウン」の浜田雅功さんが米俳優エディ・マーフィーさんに扮するため、顔を黒く塗った姿で登場した場面です。なぜ批判が起きたのか。欧米では、かつて黒人を笑い者にするようなショーで使われていたことなどから、「ブラックフェイス」は人種差別的な風習だと受け止められているのだそうです。ニュースになるまで、この演出がいけないことだとは私も知りませんでした。

日本では、黒人に差別的な目を向けている人は少ないのでは、と思います。だから「そんなつもりはなかった」という気持ちもわかります。昨年の「笑ってはいけない」は、自分も少しだけ観ていました。笑いとは、基本的にはハッピーな感情です。それなのに、自分が笑っていた対象が笑ってはいけないものだったと知って、恥ずかしいような悲しいような複雑な気持ちになった人もいるのではないでしょうか。さまざまな意見にふれて気持ちが揺れていますが、確かなことは、あれを見て嫌な思いをした人がいるということです。そのような表現は極力避けるべきだと思います。

「知らなかった」では済まされないことが多々あります。現在の失敗には、歴史を学ぶことで取り戻せるものもあるかもしれません。歴史というと、国や文明についてのことが連想されますが、ものの個別の歴史を知るのも面白いです。たとえば、今興味があるのは建築史です。きのうより今日、今日より明日の精神で生きている私ですが、過去を振り返る時間も大切にします。

参考記事:6日付 朝日新聞朝刊(東京13版)2面(総合)「ひと」

5日付 BBCNewsJapan「日本の大晦日お笑い番組で黒塗りメイク 怒りと反発も」