「視力」6000のアルマにならい、自分も

記事の中に見覚えのある顔を見つけて、思わず「あっ」と声を上げてしまいました。国立天文台チリ観測所長の阪本成一さん(52)です。前任地の宇宙航空研究開発機構JAXAで広報・普及の仕事をしていた時に、私が通っていた中学校で講演をしてくれたことがありました。2010年の冬のことだったと思います。その年の6月にミッションを終え、地球に帰ってきた小惑星探査機「はやぶさ」や民間宇宙飛行の話など、中学生でも楽しく聞けるわかりやすい内容でした。私は「民間人が宇宙に行った場合、健康に影響は出ないのか」というような質問をしたような気がします。

あれから8年。いま阪本さんがいるチリ観測所では、世界最大の電波望遠鏡「ALMA(アルマ)」の運用・保守を担当しています。これは日米欧などが約1千億円をかけてチリ北部の高地に建設した望遠鏡で、現在は22の国と地域が観測に参加しています。アルマがとらえるのは、宇宙に漂うガスやちりから出る微細な電波です。このような物質は惑星や恒星の材料となるため、これらを観測することで惑星系の成り立ちなどに迫ろうという狙いがあります。

66台のアンテナからなるアルマの「視力」は、人間でいうと6000。公式サイトによると、これはすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の10倍だそうです。サイトでは、アルマがとらえた恒星や銀河の写真などが公開されていますので、ぜひ見てみてください。

SF映画では、砂漠に複数のパラボラアンテナが点在しているシーンが登場することがあります。荒涼とした土地に皿のようなアンテナという組み合わせは実に奇妙だと思っていましたが、記事を読んでその謎が解けました。水蒸気に弱い波長の電波を観測するには、乾燥地帯が適しているのです。

知っている人がプロジェクトに関わっていることもあって、観測の詳しいしくみを知ると、広大で謎の多い宇宙も少し身近に思えてきます。そういえば、最近まともに夜空を眺めていません。下ばかり向いているからでしょうか。視力6000どころか0.1もないのですが、ときには顔を上げてみたら素敵なものが見られるかもしれません。

参考記事:7日付 読売新聞朝刊(東京12版)25面(くらしサイエンス)「宇宙見透かす66の瞳 ALMA望遠鏡」