自分の命を、考える

臓器移植法が施行されて今日で20年。これまでの人生で臓器を移植してもらわないといけないような病気になったことはありません。また、親族にドナーやレシピエント(臓器移植を受ける患者)になった人もいません。健康体で生活が出来ていることをうれしく感じています。

それだけに臓器提供は決して身近な問題ではありません。ドラマの中だけとすら思ってしまいます。今年7月から9月まで放送されていた医療ドラマ「コード・ブル―」でも臓器提供をテーマにしていました。移植を希望しても、なかなかドナーが現れないもどかしさ、移植より先に命が絶えてしまうのではないかという焦りが描かれていました。

実際、”日本の臓器提供者数は人口100万人あたりで0.7人とわずか”(読売)。そして、”移植希望者約1万3千人のうち移植を受けられるのは年間2%というのが実態です”(日経)。

ドラマで描かれたことは現実におこっているのだと感じました。一方で、国民の臓器提供への意識は変わりつつあります。

内閣府の13年の調査では脳死になった場合に臓器を「提供したい」「どちらかといえば提供したい」という人は43.1%で15年前より10ポイント増加。20歳代は63.9%、30歳代55.9%と若い世代で半数を超えた

と読売新聞の朝刊にあります。

しかし、その意識とは裏腹に、臓器を提供する、しないの意思表示をしている人は期待したほど多くないようです。現在、意思表示は保険証や運転免許証、マイナンバーカード、そして臓器提供意思登録システムなどで可能です。それらへ意思を記入している人は12.6%(内閣府の13年の調査)と少ないのが現状です。

確かに、保険証や免許証に記入するには勇気がいります。脳死と心臓停止の違いや提供したくない臓器の有無など、まじめに考えれば、考えるほど、どうすればいいのか分からなくなります。でも、その意思表示でレシピエントが救われるなら、残された家族の支えになるなら、その意思表示には大きな意味を持ちます。

これを機に、授かった命や身体をどう活かしたいか、考えてみたいものです。意思表示はあくまで任意。誰に強制されるわけでもありません。また、いつでも、何度でも変更ができるのです。

 

参考記事

16日付 読売新聞 13版 1面 「命の絆 臓器移植法20年 「僕のをあげてね」決断」

同日付 読売新聞 12版 8面(特別面)「ドナー受け入れ 課題」

 同日付 日本経済新聞 13版 34面(社会面) 「提供の意思表示を」