発想の転換を被災地で

 「人が帰ってこない。」福島県の沿岸地域で頻繁に聞こえてくる声です。

 福島第一原発事故により、住民は他所への避難を強いられました。避難指示が解除されたからといって住民が戻ってくるわけでもなく、一部区域を除き、避難解除から2か月たった浪江町と富岡町では今でも帰還率が1%台にとどまっていることを本日の日経新聞が報じています。

 以前、あらたにすで浪江町の現状について、現地から書かせていただきました。(支援の仕方を考える)。あれから2か月後の先月中旬に、再び浪江を訪れました。

 介護や医療サービスなどの公共サービスは「人がいないと事業として成り立たない」として、事業再開の見込みが立っていないものもあります。一方で、そうしたサービスが再開されないと町に帰ってこれないといった声も入っています。

 それでも、「不便でも、自分がどう思うか」。役場の方がそうおっしゃいました。雇用に関しても町は企業誘致などに取り組んでいますが、住民が増える具体策を町として見つけることができているわけではありません。それでも「「人がいなくて寂しい」ではなく、「静かだから読書とかがはかどる。」といった発想の転換がこの町には必要なんだ。」と、語っていました。

 先月30日、福島第一原発事故を巡って強制起訴された元会長の勝俣恒久被告ら旧経営陣3人が東京地裁で初公判が行われました。今まで明らかにされていなかった経営者の責任の有無が改めて問われています。裁判をきっかけに、今一度事故の重さや原発政策のあり方、東日本大震災の復興ということを考え直す必要があります。

参考記事:
2日付 日本経済新聞夕刊(東京4版)9面(社会)「浪江・富岡町帰還1%台、福島避難指示解除2カ月時点」