走る楽しみを忘れたくない

 昨今話題が絶えないクルマの自動運転技術で、ライバル関係や業界の垣根を超えた協業が加速しています。そもそも自動運転を実現するには精度の高い3D地図や位置情報、無線システムが不可欠ですが、それらを単独で投資し開発することは困難なのが現実です。その課題を克服する動きです。

 トヨタ自動車やホンダ、SUBARU(スバル)など15社が共同出資する3D地図の開発会社は、新たに官民ファンドの産業革新機構やダイハツからも出資を受け資本金を13倍に増強することになりました。2018年度までに全国約3万キロの3D地図を作成する予定です。また、総務省が昨年12月に設けた「つながる車」の課題を検証する有識者会議には、自動車メーカーだけでなくNTTドコモやKDDIなど通信事業者も加わり、信号や交差点など歩行者が行き交う一般道での自動運転に必要な技術開発に業界横断で取り組みます。

 私もクルマを運転するのが趣味で、週末には名古屋や鳥取、奈良など高速道路で遠出することがしばしばあります。その際、「もしこのハンドル操作がなくなると、走る楽しみが消えてしまうのではないか」と思うことがあります。現状では、政府は車線変更までできるような完全自動運転の実用化は早くても20年度以降と想定しているようですが、そうなると「走ることを楽しむ車」が減ってしまうのではないかと心配しています。

 若い人ほどクルマに興味がないと言われる今だからこそ、駐車や車線変更が苦手な人や、毎日の通勤に使う程度の人は自動運転車へ移行していくでしょう。自動運転車が普及するのは時代の流れとしては避けられないでしょう。しかし、そんな中でもドライバーがハンドルを握り、高速道路に合流するときは加速する勢いを楽しみ、対向車に道を譲ってもらう「ドライバーズコミュニケーション」の優しさに心を打たれる。そんな「走ることを楽しむクルマ」を忘れたくないと思えてなりません。

参考記事:

28日付:読売新聞14版朝刊9面 「自動運転開発 異業種と走る」