豊洲市場問題 ゴールはどこに

 「専門家が決めた」「任せていた」「記憶にない」「誰かが私の判子を使ったのでは」

 3日、石原慎太郎元都知事が会見で述べたのは、あまりにも無責任で逃げ腰な言葉ばかり。築地市場から豊洲への移転を決めた当時のトップから、問題解決に近づくような有意義な発言はありませんでした。

 石原氏が都知事に就任した1999年4月には、豊洲への移転が既定路線となっていたといいます。そのため、東京ガスの工場跡地を選んだことに、自身の判断は反映されていなかったと主張しました。東京ガスとの契約について、「都職員や議会が判断したものを裁可した」とし、責任は認めたものの、しこりが残る釈明でした。

 これでは「トップ」である意味がありません。部下や議会、専門家の意見に頷くだけでは、問題を理解し、都政の舵取りをしてきたとはとても言えません。また、頷くだけでも問題ですが、頷いたのならば最後まで責任を取るべきです。

 ただ、ここで気になるのは石原氏をはじめ、豊洲移転を決めた人の責任を追求すればいいというわけではありません。もちろん経緯を調べ、どこに責任があるのかを探すことは大切ですが、たとえ石原氏が責任を取ったとしても、市場に携わる人たちが豊洲ですぐに商売することはできません。

 責任追及の報道を見ていると、市場で働く人、市場の魚を楽しみにしている人は遠くの存在でしかないような気がするのです。石原氏の残念な会見の間にも、築地で頭を抱えている人は大勢いるはずです。ゴールは安全な市場を開くこと。そのためには、築地や豊洲の現状を見つめ、市場や消費者の声をしっかり救い上げてほしいと思います。

参考記事:
4日付 各紙朝刊「石原慎太郎元都知事 記者会見」関連面