北海道・酪農の大転換

 一括から個別へ。日本の生乳の約半数を生産する北海道で、酪農に大きな変化が生まれています。日経新聞の「真相深層」が興味深い話題を扱っていました。農業の自由化とデメリットについて、今後の流れを占うものです。

 生乳を農協系組織に売ることを止め、より高く買ってくれる相手に変える動きが北海道で起こっています。これまで生乳の流通を担ってきたのは、地域ごとの農協系団体でした。生乳を酪農家から買い取って、一括販売しています。ところが、北海道の農協系団体「ホクレン」の買い取り価格は、本州よりも2割ほど安く、農家の不満が募っていました。生産した生乳のほとんどが、価格の安い加工用として買われてしまうからです。

 そうした状況が、新しい企業の参入につながりました。群馬県の企業「MMJ」が、ホクレンよりも高い価格で生乳を買い、飲料用として販売します。北海道でのビジネスを始めて2年で1%ほどのシェアを得て、さらにシェアを広げつつあります。大手の乳業も、農協を介さず直接酪農家とつながるために、直接の支援を始めました。

 消費者も無関係ではありません。買い取り価格の高い飲用に回ることは、酪農家にとっては嬉しいことです。一方で加工用生乳が減り、バターの生産が少なくなる可能性があるといいます。2014年ごろに起きたバター不足は、記憶に新しいのではないでしょうか。クッキーやケーキの値上げをはじめとする、様々な加工品に影響が及びました。

 話題は北海道内にとどまりません。価格競争が機能していないことは、全国的に問題視されています。今国会にも「農業競争力強化支援法案」として提出されました。農業の自由化とそのデメリットは、差し迫った問題として議論されようとしています。現在は森友学園でてんやわんやの国会ですが、長期的な課題も、心の隅に置いておきたいところです。

参考記事:
3月3日付 日本経済新聞朝刊 2面『農協系組織からくら替え 生乳流通、北海道の乱、高値で売買、制度に風穴(真相深層)』