なぜもっと、早くに辞任しなかった?

【辞任】《名・ス他》
今までついていた任務を辞退すること。職務を自分から申し出てやめること。

  「辞任」という単語からは、どこかマイナスの印象を受けます。あまり使いたくないワードかもしれません。しかし、盛り土問題が発覚してから調査が進められてきた豊洲市場(東京・江東)に関する記事で、ついにこの言葉が登場しました。

  今朝の日本経済新聞は、「豊洲市場で土壌汚染対策の盛り土が行われていなかった問題で、東京都の中西充副知事が引責辞任する意向」と伝えています。都はこの問題で歴代幹部20人近くを最大20%減給とする懲戒処分の方針を決めました。中西氏は同市場の実施設計時の中央卸売市場長で、処分対象の1人です。副知事の辞任や幹部の減給で責任を明確にするようです。

  都が今月1日にまとめた内部検証報告書は「事務方の最高責任者としての責を免れ得ない」と指摘しており、中西氏はこの10月まで中央卸売市場を所管する副知事でした。豊洲市場の建設では、2011年8月に盛り土をせず、地下空間を建設する方針を部課長会で確認。11年9月に実施設計が始まりました。

  内部検証報告書では当事の局長級、部長級の8人を、盛り土をしないことを決めた責任者としましたが、このほか、事実と異なる議会答弁に関わった幹部らも対象とします。既に退職したOBは法的な処分ができないため「減給」相当額の自主返納を促します。

  「やっと責任者が辞めるのか」と思う人も多いのではないでしょうか。一連の問題が明るみになってから、副知事の辞任に至るまで、時間がかかりすぎているように思います。「職務を自分から申し出て辞める」まで、盛り土問題に対し中西氏は何を思っていたのでしょうか。胸中を聞きたいところです。また、「最大20%の減給」という措置が、問題の大きさに比べて適当なのかどうかも議論されるべきではないかと思います。盛り土問題がなければ、すでに移転は進められていたのです。土壌汚染を検証するための人件費も余分にかかってしまったでしょう。

  副知事の辞任と、幹部ら約20人の減給。それだけでは済まされない傷跡が、豊洲市場にあるのではないかと思います。一連の問題は、都民だけに関係があるわけではありません。他の地域でも不正はないのか。組織を自浄していく体制はあるのか。しっかり考えていかなければなりません。

参考記事:
25日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)「都副知事が辞任へ 元市場長、豊洲問題で引責」