理解ありきの制度であることを忘れないで

  社会保障制度の中で最も給付金の割合が高い年金。今国会中にTPP承認案及び関連法案に続く重要な法案の採決が行われそうです。朝日新聞では

「年金抑制法案 採決強行」

というタイトルで、他の二紙と比べて、写真付きで掲載しています。その写真は、過去の国会でもあった、野党が集まって反対している中での採決といったものです。

  TPP・同一労働同一賃金制度を含めた働き方改革が争点であると、今国会が始まる前には報道されていただけにこの記事を見たときにはとても驚きました。今後世代間格差がより広がることが指摘されている年金問題。法案の審議時間が約20時間しかありませんでした。2年前の国会で出された医療・介護改革法案では審議時間が40時間近くになったところで自民党・金子恭之氏が「ほかの重要法案と比べて遜色ない時間をとった」として採決しました。時間だけで話し合いの質が良くなるとは限りませんが、それでも議論不足であったことは否めません。

  今回の年金改革では、年金財政の悪化を防ぎ、将来の年金給付水準を確保することが狙いとされています。安倍首相が「将来の年金水準確保法案」と評価するように、与党は世代間での公平性を確保するためには必要な政策だと訴えています。

  少子高齢化社会が進む今のままのやり方では、社会保障制度は成立しなくなります。他方、制度に対しての信頼感が失われてしまうと、「税金を使って社会的に困っている人にお金を給付する」という根本的な仕組みが批判の的となります。このように、負担者側の理解なくしては成り立たないものなのです。

  今の財政状況を見ても、制度改革は早急に対応すべき課題であったことは間違いありません。ただ、与野党での議論もかみ合わないまま採決が行われるなど、負担者が理解できるものであるとは到底思えません。社会保障制度が、持続可能なものであり続けるためにも、国民の理解を意識した議論をしてほしいものです。

参考記事:
26日付 各紙朝刊 「年金改革法案成立」関連記事
厚生労働省 「社会保障制度改革の全体像」
2014年5月15日付 朝日新聞 朝刊 3面「医療・介護改革法案を可決 衆院委、与党が採決強行」