「ピッ」と買い物が世界でも

 ピッとカードをタッチすれば、電車に乗れるし、何でも買える。「ピッ」は日常生活に欠かせなくなりました。小銭を出す手間が省けることから、現金を使う機会が減ったという方も多いのではないでしょうか。ただ、国内で主流のIC交通乗車券「Suica」や「楽天Edy」も、海外では使えません。外国では、現地通貨かクレジットカードが基本です。その支払い方法をグーグルが大きく変えようとしています。

 グーグルがスマートフォンを使った電子決済サービス「アンドロイドペイ」を日本で始めると、31日の日本経済新聞が伝えています。このサービスは、既にアメリカとイギリス、オーストラリア、シンガポールで始まっており、これを利用すれば、海外での支払いも「ピッ」で済むことになります。

 利用方法は、スマホに専用アプリをダウンロードし、クレジットカードやデビットカードの情報を登録するだけ。レジでカードを出さなくても、読み取り機にスマホをかざすだけで支払いができる仕組みです。

 カードを使う時には、ほとんどの場合でサインの記入や暗証番号の入力が必要になります。また、海外ではパスポートの提示を求められ、カードの名義人と同一人物であるかを確認されることもあります。ただ日本円を現地通貨に替える手数料を考えると、カードで買い物したほうがお得なことから、筆者が海外で買い物をするときはカードで済ませがちです。これからはスマホをかざすだけで支払いができれとなれば、これほど便利なことはないでしょう。

 一方で、簡単に支払えてる怖さもあります。スマホを盗まれれば、悪用される可能性は大いにあります。暗証番号も本人確認も必要なければ、「ピッ」し放題です。そのうえ、海外でスマホがなければ何もできないと同然。考えただけでも恐ろしくなります。

 また、グーグルはこのサービスで利用者の消費行動に関するデータを収集、分析します。それらを利用して、一人ひとりに提供する情報や広告の精度を高め、広告事業を拡大しようとしています。いつ、どこで、何を買い、いくら使っているのかが、すべて把握されかねません。加盟店に限られるポイントカードの消費行動データよりも、より詳細な情報が得られます。買い物のビッグデータがさまざまな企業で使われるということです。

 世界中で簡単に便利に買い物ができることは幸せなことです。ただその裏には消費者が理解しておくべき危うさや怖さが潜んでいることを忘れてはなりません。

参考記事:
31日付 日本経済新聞朝刊(東京14版)「グーグル決済 秋にも上陸」1面