廃れゆく日本の文化財・きもの 職人の後継不足が問題に

1月上旬、全国各地で成人式「二十歳の集い」が開催され、二十歳になる筆者も地元の式に出席しました。

同い年の女性たちが色とりどりの振袖を身につけ、とてもキラキラしていました。筆者も両親が必死に探してくれた黒の総絞りの着物で式に臨みました。

特別な日にワクワクした気持ちで身につけるのが着物。現代の私たちの着物に対する意識は昔とは大きく変わってきています。実際、着物の1世帯あたり購入額は2002年から18年にかけて減少傾向にあります。一方で、着物のレンタルの支出は15年あたりから増加しています。筆者の購入した総絞りの振袖は百数万円かかり、それ以上の価格帯の振袖もあります。筆者の周りも成人式の着物を借りている人の方が多く、着物は「レンタルする」ものとなってきていると感じます。

筆者が成人式の時に着た総絞りですが、代表的な「絞り染め」は生地を小さくつまんで糸で括ることで作られます。括った部分は、染色の時に白く残るため、それが模様となります。また、色染めの後に生地を括った糸をほどくと「括り粒」という一体的な凹凸が残り、これが独特の風合いを作ります。

「絞り」は、職人が生地をつまんでは括り、つまんでは括りを繰り返し、丹念に一粒一粒を描いていくことで作られます。そして生地の全てにわたって絞って作られた「総絞り」は一つの振袖で粒の数が二十万以上にも達します。全ての工程を人間の手で行っている、なんとも繊細な作品であるということです。

その和服の世界では近年問題が起きています。職人の後継者不足です。22年の時点でも職人の平均年齢は70歳を超えていると言われています。若い後継者がいないため、平均年齢は歳を追うごとに高くなっていくばかりです。筆者が購入した振袖の店舗では「絞りの工房1つ辞めるから、浴衣が去年の(仕入れの)6割減になる」と話していました。浴衣だけでなく、この影響は着物全体にも襲ってくるでしょう。職人の高齢化に伴い経営が難しくなってきている実情があります。

後継者が不足している1番の理由は、賃金の低さにあると筆者は考えます。職人の給料は15万円ほど。これだけで生計を立てることは不可能です。「絞り」という技術を持つ者しか働けない現場であり、日本の伝統的な工芸品であるのにもかかわらず、給料が低いのはあまりにも仕事の内容と見合っていないと筆者は考えます。

今後、この状況が変わることがなければ、伝統的な絞りが施された着物は店頭からどんどん姿を消し、価格の上昇で手の届かない存在となっていくことが危惧されます。また、職人も高齢化が一段と進み、絞りをできる人がいなくなってしまうかもしれません。この状況を変えるためにも、まず職人の賃上げを提案するべきでしょう。

日本の美しい文化財を後世に受け継ぐためにも、私たちが守っていかなければならない存在なのです。

 

参考文献:

・1月7日付、日本経済新聞、「麻生太郎氏「20歳は捕まったら名前出る」 成人式で祝辞」

・1月8日付、読売新聞オンライン、「成人の日 人口減の時代を切り開こう」

・1月9日付、朝日新聞デジタル、「「成人の日」今年も20歳でお祝い 県内各地で式典」

・2015年10月18日付、全日本きもの研究会 きもの春秋終論、「きものを取り巻く問題 i職人の後継者不足」

・2022年6月18日付、和想館公式オンラインストア、「絞りの浴衣」

・藤娘きぬたや、「総絞りとは。」

・2023年9月22日付、業界動向リサーチ、「着物業界の動向や現状、ランキングなど」