「断熱後進国」―日本の寒い住宅事情 

実は、世界と比較しても寒い日本の住宅。「断熱後進国」と呼ばれるこの国の住宅事情をまとめました。

 

秋が深まり本格的に冬に突入しました。つい10日ほど前まで、東京は20度前後と過ごしやすい気候でしたが、ここ数日、朝方には10度を下回る日が続いています。寒さを凌ぐために欠かせないのが暖房です。しかし、エアコンなどではなかなか暖まりません。実は、日本の住宅は熱が逃げやすく、暖まりづらい構造的な問題があるからです。

熱の逃げ道「窓」

断熱性が低い日本の住宅。何が原因なのでしょうか。実は窓の断熱性に問題があります。以下の図は、ヨーロッパの窓の断熱性を「熱貫流率」という値で表したものです。数値が低ければ低いほど、熱を逃がさない性能を有していると言えます。おおむねこれらの国々では、1.0〜2.0程度の数値になっています。

 

図1(出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78836460U4A021C1000000/)

他方で、日本の住宅は6.5程度と断熱性能がきわめて低い結果となっています。その原因は、窓枠の素材とされています。ヨーロッパでは、熱を逃しにくい樹脂製のサッシで窓を囲っています。日本は、加工がしやすく、長持ちするアルミサッシが大半です。熱を伝えやすいアルミサッシが、日本の住宅の断熱性を低下させている元凶だと言えます。

地球温暖化と電気料金

断熱性の低い窓枠を使い続けることのデメリットは二つです。エアコンなどの暖房器具で部屋の温度を上げようとしますが、実際には相当な熱が外部へ流れ出してしまいます。熱が逃げてしまっているということは、それだけ暖房器具の消費するエネルギーが増えることになります。地球温暖化対策に逆行するうえ、電気やガスなどの料金も増加します。断熱性能が低いことで、エネルギーを浪費し、高い料金を負担しているのです。

政府の対策は

政府は断熱性能の向上策を進めてきました。昨年からは、断熱性向上の住宅リフォームに対して上限200万円の補助金を支援する事業を始めています。2030年度で家庭部門からのCO2排出量を13年度比で約7割削減する目標を掲げており、無駄なエネルギー消費を防ぐ断熱性の向上を期待しています。

今年11月2日の記者会見で岸田文雄首相は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を発表しました。その中で、暮らしのGX(グリーン・トランスフォーメーション)の一環として、断熱窓への改築支援策を継続する姿勢を表明しました。さらに断熱性能に対する基準を厳しく設けて底上げを図っています。東京都など各自治体も独自の支援策を打ち出しています。

断熱先進国へ向けて努力を

我が国は、ヨーロッパだけではなく、中国や韓国など比較的気候が似通った国々にも住宅の断熱性能で遅れをとっています。エネルギー価格が上昇する中で、「寒い」住宅問題の抜本的な解決は急を要します。日本の技術力でより暖まりやすく、冷めにくい住宅を作り、断熱先進国に肩を並べることを期待したいと思います。

 

NHK 実は危ない!ニッポンの“寒すぎる”住まい