国家予算―どのように決まるの?

国会だけではなく、政党、各省庁などでも、政策をめぐって日々議論が交わされています。しかし、政策を実行に移すためには、「お金」が必要です。以前、国会議員の事務所でインターンをしていた際に、何をするにも「財源」がなければ始まらないことを学びました。

ところで、この政府の「予算」はどのようなプロセスで決定されるのでしょうか。テレビなどでは、「骨太の方針」が決まったといった専門用語が飛び交いますが、それがどのような意味を持つのか、詳しい人でないとわかりません。そこで、今回、政府の予算がどのような過程を経て決定されるのか、調べてみました。なお、ここでは、政府の年間の予算である「一般会計予算」を考えます。

「骨太の方針」(6月頃)

予算編成が本格的にスタートするのは、6月ごろに発表される「骨太の方針」からです。

正式には、「経済財政運営と改革の基本方針」と呼ばれています。政府として、どのような政策に重点を置いて、翌年度の運営をしていくのか、基本的な方針を定めるものです。2001年の小泉政権下で、初めてまとめられたもので、それが現在も引き継がれています。直ちに予算配分を決定するものではありませんが、政府の重点分野を示すだけに、その後の予算編成での優先順位に直結します。

例年、6月ごろに政府が方針を決定しますが、20年は、コロナウイルスの影響もあり、1ヶ月延期され、7月ごろにまとめられました。コロナ禍が一段落した今年は、6月7日に「骨太の方針」が公表され、16日に閣議決定されました。

「概算要求」(8月頃)

各省庁が、財務省に対して、大まかな予算額を要求します。7月ごろに財務省が決定する「概算要求基準」というルールに基づいて行われます。ここで、各省庁が、どのような提案をするのかが注目されます。昨年末には、安全保障に関する政府の基本的な方針を定める「安保3文書」が閣議決定されました。この文書では、防衛予算の増額などが盛り込まれています。そのため、防衛省などから提出される概算要求がどのような内容、規模になるのか、注目が集まっています。

政府予算案決定(12月頃)

概算要求に基づいて、各省庁と財務省が調整を進めます。どの予算が必要で、いちはやく政策として打ち出すべきなのか、無駄な要求が含まれてないか、政府内で議論されます。金庫番である財務省は、当初の要求額を削り込んだ財務原案を示します。

ここからスタートするのが「復活折衝」です。省庁レベルで決着しない時には、大臣が直接出てくることになります。予算折衝のヤマ場の「大臣折衝」です。役所をあずかる大臣が自ら財務省に出向き、財務大臣と直談判します。これでも決着しない案件は、自民党幹部と財務大臣との交渉である「政治折衝」に持ち込まれることもあります。政府としての予算の細目は年末ごろに固まり、政府予算案として閣議決定されます。

国会予算審議(1月頃〜)

政府予算案は、1月頃に開かれる通常国会に提出されます。予算については、衆議院から参議院の順に審議が進む決まりです。まず、予算委員会で議論が行われ、その後、本会議に送られ、審議されます。政府・与党は前年度が終わる3月末までに予算を成立させることを目指し、野党は厳しい注文を付けることで早期の成立に抵抗するのが一般的です。

予算案は、衆院を通過すれば、憲法の規定により30日後に自然成立することとなっています。そのため、衆院の審議が重視されることになります。

 

おわりに

このように、長い時間と手間をかけて、政府、与党、国会とさまざまな段階で予算案は揉まれます。このプロセスに合わせて、国会議員には陳情団などが押し掛け、さらに与党内での調整も行われます。23年度は、過去最大114兆円の予算が成立しました。その使い道について、国民は厳しく目を光らせることが必要でしょう。

 

朝日新聞『(社説)概算要求基準 歳出「正常化」できるか 』2023年7月31日

日本経済新聞『骨太の方針とは 予算・政策の方向性示す 』2023年6月8日