夏の高校野球 連合チームから目を離せない

7月ももう中盤です。ほとんどの地域では、梅雨明け宣言こそ出ていませんが、夏も盛りを迎えています。都内では先週12日に八王子市で39度を記録しました。気温計の目盛から暑さを実感しますが、それよりも心を熱くさせるのは夏の風物詩、高校野球でしょう。全国で甲子園の予選が開催されています。

東京では16日にすべての高校が初戦を終えました。今大会、あまり注目されていませんが連合チームの活躍が光りました。部員数の不足などの理由から複数の野球部が合同したのが連合チームです。東東京大会では「大島・大島海洋国際」が淑徳巣鴨に、「浅草・東京科学技術・深川」が渋谷教育学園渋谷に勝利しました。

「大島・大島海洋国際」は両校とも太平洋に浮かぶ大島にある高校です。自然豊かな大島ということもあり、ピッチャーの清水くんは中学生の頃よく素潜りをしてブダイを獲っていたそうです。「腹を狙うと内蔵が裂けて美味しくない。頭を狙わないと」大自然の中で彼らの肉体は育まれました。大島高校野球部は部員が3人、大島海洋国際高校も部員3人で両校合わせても人数が足りないことから、連合チームを作り、さらに大島海洋国際高校の他の部活から助っ人を4人集めての挑戦でした。チームができたのは今年の6月に入ってから。さらに大島海洋国際は乗船実習の授業があるためなかなか練習時間を確保できず、合同練習は10回ほどでした。それでも何度も何度も反復練習を繰り返したり、マシンを活用したりと少ない部員数を生かした実践的な練習で本番に望みました。

7月9日明大球場で行われた淑徳巣鴨との試合ではエースの清水くんが9回を2失点で投げきり、打ってはショートの新渡戸くんが4打数3安打の大活躍。急造チームで不安だった二遊間の守備でも何度もダブルプレーを見せてくれました。残念ながら15日の岩倉戦で敗退したものの、恵まれない環境でも最後まで戦い抜いた選手たちの活躍は見た人の記憶に残ったでしょう。

好投した大島高校の清水投手 9日筆者撮影

 

浅草・東京科学技術・深川では、浅草高校唯一の部員である萩原くんの活躍が光りました。彼は中学生の頃、自律神経の不調から学校に通えない日々が続きました。それでも野球をやりたい思いから、高校では一人でノックを受け打撃練習を続けてきたそうです。9日に明大球場で行われた渋谷教育学園渋谷戦では努力が実りランニングホームラン1本にスリーベースヒット2本の大活躍でチームの勝利に貢献しました。

ランニングホームランを達成した萩原選手 9日筆者撮影

 

少子化と野球人気の低下により全国の野球部員数は最も多かった2014年の17万人から13万人に減少しており、この傾向は今後も続くことが予想されます。それに伴い連合チームは増えていくでしょう。大阪桐蔭や日大三など名門勢が注目されがちですが、連合チームに注目して声援を送るのも、強豪校とは違った面白さがあります。勝った負けたが全てではない。そう感じさせてくれる2試合でした。

 

参考資料

日本高等学校野球連盟 部員数統計

https://www.jhbf.or.jp/data/statistical/index_koushiki.html

 

参考記事

読売新聞16日付朝刊都民版「輝く 部員一人重ねた努力」

東京新聞 7月13日 「定時制たった1人「努力の天才」が連合チームを勝利に導く 浅草高の萩原聖翔さん 病気で一度はあきらめた野球 」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/262863