目の前の火事、ツイートする前に立ち止まって!

29日の深夜、東京都中野区中野4丁目で火災が起きました。筆者が通う明治大学中野キャンパスの真横で、通学の際によく通る場所です。駅前の商店街で友人とご飯を食べた帰りだったのですが、大学の横を通ろうとすると周囲は緊急車両の赤色灯で照らされ、鳴り響くサイレンがノイズキャンセルイヤホンを貫通し鼓膜まで届いてきました。大きな火の手が上がる火災でしたが、日をまたぐ頃には現場も落ち着いていました。

5月29日筆者撮影

こうした事故が起きた際、Twitterで検索すると状況をよく知ることができます。例えば「中野 火事」「明治 火事」「明大 火事」と入力すると、すでに現場にいた人たちが投稿した写真や動画から火災の規模がわかるのです。こうしたSNSでの情報収集はネットメディアでよく使われる手法です。

筆者は昨年、ネットに上がった事件事故の第一報を報道機関や警察消防などに届けるネット通信社でインターンをしていました。ここではTwitterの情報をAIで解析して事件性の高いものに絞ったうえで内容をチェックします。火災や交通事故は当局が情報を掴むより先にネット上に情報が流れていることが多くあります。こうしたデータをいち早く届けることで、警察や消防などの迅速な対応を促すことができます。

ここで重要なのは事件や事故が起きた場所です。沖縄の火災情報を首都圏の行政機関に速報しても意味がありません。場所を素早く正確に特定することが求められます。そのための方法は文章の検索と写真分析の2つです。投稿主が過去に投稿したツイートを場所別で検索にかけることにより、その人がおおよそ何県の何市に住んでいるかを絞り込むことが可能です。次に画像を見ることで、より具体的な情報が手に入ります。上の画像なら装備に警視庁、東京消防庁と書かれています。都内で起きた火災であるということが確実になるわけです。

この写真だけではより詳細な場所までは分かりませんが、写真にプラスして場所を特定できるような文章が付いているでしょうし、別な人からの投稿もあるでしょう。文章と写真を組み合わせてストリートビューで探せば、場所をピンポイントで示すことができます。インターンをしていた頃は、投稿を発見してから3分程度で場所を突き止めることが求められていました。SNSでの事件事故情報の発信は、素早い対応のために非常に役に立っています。

5月29日筆者撮影

しかし、気をつけたいのは個人情報の流出です。こうした大きな事件が起きた際に、自宅から撮った写真はもちろん、「家の前で~」「通っている大学の前で~」などと投稿してしまうと、投稿者の居場所が簡単に割り出されてしまいます。誰も見ていないだろうと思っているかもしれませんが、少なくとも報道機関は見ています。また、私のようにSNSで検索をする人間がいると、「このアカウントはあそこに住んでいる人のものなのか」となりかねません。実際に中野での火災でも、あるマンションの最上階の角部屋から投稿したと一目でわかるものがありました。ストーカーなどの犯罪被害に繋がりかねません。

普段の投稿から住んでいる場所を割り出せるような情報を流さないように心がけるのはもちろんですが、事件や事故のような注目度の高い情報ではより慎重に画像を選び、文章に神経を配ることが欠かせません。火事や事故のような非常事態を目にすると、興奮状態になり焦って投稿してしまいます。そんなときこそ一息ついて落ち着いてからの情報発信が求められます。

 

参考記事

読売新聞オンライン2021年6月12日「「特定屋」ネットで暗躍…ストーカーの依頼で女性のSNS割り出し」

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210612-OYT1T50189/