「化学物質過敏症(Chemical Sensitivity)」を知っていますか

間もなく6月ということもあり、梅雨入りした地域が増えています。この時期の悩みのタネが「洗濯物」。外に干せない回数が増えて、生乾きが気になり、結局もう一回洗うことに。そんな経験のある方も少なくないのでは。

洗濯に必須のアイテムが「洗剤」「柔軟剤」。当たり前のように使っていますが、もしかしたら周囲やあなた自身を病気にする可能性を秘めているのかもしれません。

「化学物質過敏症は,『過去にかなり大量の化学物質に一度曝露された後,または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状』(Cullen, 1987)と定義されています。」(広島県公式HPより)

化学物質過敏症(Chemical Sensitivity)は、日用品に含まれる科学物質が原因となり突如として発症します。例えば、家庭用の殺虫剤、防虫剤、香水などの化粧関連用品、ボディケア製品、洗剤や柔軟剤。当たり前に使っている製品の影響で体に変調が生じます。しかし、他の疾患との識別も難しいため、発症当時に気づくことはかなり困難です。

事実、診断がつくまで医者から「異常なし」と言われ続け、医療機関を何ヵ所も回り続けた人もいるそうです。2017年に新潟県看護大学の永吉准教授が上越市内の小中学生に実施したアンケートでは、対象者の約10%に化学物質過敏症の兆候が見られたという記録があります。

症状は自律神経障害、循環器障害、気道障害、免疫障害、消化器障害など様々。症状の程度については個人で違いがあるといいます。発症の仕組みについては今もわからないことが多く、治療法も、筆者が調べた範囲では「根源となった物質と距離を置く」ということ以外は具体的に示されていませんでした。

一度症状がでるとごく少量の物質にも過敏になり、容易に反応してしまうとのことです。あるニュースで取り上げられていた方は、会社にいくために防護マスクをつけていました。

化学物質過敏症を予防するために、私達ができることは「有害な成分を知り、その成分の入った日用品を避ける」ということ。しかし柔軟剤や洗剤などの表示方法は、業界の自主基準に準じた成分表示のみで、香料等に関する詳細な情報については記載がないのが現状です。

とある柔軟剤の写真。成分には「香料」としか書かれていない。(筆者撮影)

EUでは22年に化粧品の香料アレルゲンラベルに関する法規制が改訂され、指定された香料が基準の含有量を超えた場合には、単独で表示しなければいけないという規定が設けられています。

私たちが気をつけるべきことはたくさんあります。しかし、消費者だけでできる範囲は限られています。日本でも生産者と消費者が協力し、効果的な対策が打てる日が1日でも早く来ることを強く望みます。

 

参考記事:

28日付 朝日新聞朝刊(東京)6面「『香害』の苦しみ 知ってほしい」

 

参考文献:

笠原芳隆・大庭重治, 健康管理に特別な配慮を必要とする子供の支援者間連携 -個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成・活用を通して- ,上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要,2023年,第29巻,p9ー13

酒田市 健康福祉部 健康課 成人保健係,化学物質過敏症をご存じですか,酒田市公式サイト,https://www.city.sakata.lg.jp/kenko/iryo/kagakubussitu.html

広島県 薬務課,シックハウス 化学物質過敏症 家庭用品について,広島県公式サイト,https://onl.la/xuWsUgz

香害図書館,香害図書館AboutUs,香害図書館

https://kogailibrary.org/aboutus/

CIRS,EUが化粧品における香料アレルゲンラベルに関する法規制を改訂,CIRS

http://jp.cirs-group.com/the-european-union-to-amend-the-regulation-on-labelling-of-fragrance-allergens-in-cosmetic-products-nihongo