スマホなし東京1週間 リアルに体験

あれ?スマホないんだけど…

東京で予定があり、福岡から飛行機に乗る直前、スマホがないことに気が付きました。空港までは電車でしたが、ICカードを使っているのでスマホを出すことはなく、朝早かったので電車では爆睡。全く気付くタイミングはありませんでした。

さすがに焦りました。1日2日携帯がないというのではありません。今回は1週間です。学校へ行くのに忘れていくことはたまにありますが、長期間、しかも慣れない東京の地です。幸いパソコンを持っていたので、空港のWi-Fiに接続しLINEアプリを起動。これからの1週間で会う予定だった友人に連絡が取れないことを知らせました。さらに、待ち合わせの時間と場所が決まってない約束では「スマホ忘れたから、待ち合わせ場所分かりやすいとこにお願い!」と、必ず会える場所を指定してもらうようにお願いしました。念のため電話番号を聞き、いざとなれば公衆電話からかけるねと伝えました。

他に感じた不安は、乗換案内と地図がないこと。筆者にとって東京の電車は乗り換えが難しく、また初めての場所が多いため、目的地がどのあたりにあるのか分からないのです。宿泊するホテルでWi-Fiをつなぎ、パソコンで調べてからすべてメモに書き残します。乗る駅や路線、発着の時刻、念のため、その前後の電車の時刻もメモします。さらに、何番出口から出て、目印の建物で左、次を右、などと道も細かく書いていきました。方向感覚に不安のある筆者にとって、目的地にたどり着けないことほど恐ろしいことはありません。普段はGoogleMapのようなアプリに目的地を入れ、「案内スタート」のボタンを押せばすべて解決。道を覚える、調べるといったことをしてこなかったツケが回ってきたように感じました。

駅でもらったマップと握りしめて歩いたメモの一部(12月6日筆者撮影)

さらに東京で真っ先にしたのは現金の引き出しです。電子決済を利用していたため、スマホが使えないことに大きな不安を感じたのです。よくよく考えればクレジットカードを使えばよかったのに、スマホがないというだけで、かなり焦っていたようです。

しかし、意外となんとでもなるものです。財布はありますし、困ったら誰かに聞くこともできます。優しいことに、東京では道のところどころに周辺地図が立っています。自分の場所を何度も確認しながら目的地に。旅先ではご飯や場所を写真に収め、後から振り返って思い出すことが好きなため、自分のタイミングで撮影できないことは大きな痛手でしたが、一緒にいる友人に撮った写真を後で送ってもらえればいいのです。待ち合わせの場所も時間も決まっているし、大して問題はありませんでした。

会った友人に話を聞くと、自分よりも焦っていたようです。「連絡が取れないから、絶対遅刻できないと思ってがんばった」「会えるかほんとに不安だった」と時間に余裕をもってきてくれた友人、あんなにメモをして場所や時間も書いたのに待ち合わせ場所を間違えたときには、スマホを持っていないと分かっていてもLINE電話をくれていた友人もいました。また、居酒屋ではLINEの友達追加をすると餃子が1人前無料などのサービスが一人だけ使えず、少し分けてもらいました。

かなり迷惑をかけたと反省し、またそれを快く受け入れてくれた友人に感謝しかありません。周りの友人が「全員」スマホを持っているなかで、一人だけないというのは、非常に申し訳ない気持ちになります。自分は大して困らなくても、いつもと違った対応を強いることになったからです。

一方で小学生のころを思い出すと、待ち合わせは電話で決め、場所は分かりやすい看板や目印の下。電車に遅れたら連絡がつかないからと必死に時間に間に合わせようとしました。今はどうでしょうか。遅れそうになってもスマホで連絡がつくため「ごめん、5分ぐらい遅れそう!」、待ち合わせ場所を変えたくなれば「今本屋にいるから着いたらこっちきて!」、こんなやりとりができます。さらに、行きの電車のなかで下調べもできます。便利な生活は捨てがたいし、いまの暮らしを手放す必要があるとも思えません。しかし、時間にルーズになりがちだったり、自分で調べる手間を省きすぎたり、そんなスマホへの頼りすぎは避けたいものです。

「携帯電話がないほうが、自分の時間を大事に使えると思います」。メールを送った叔父からの返信がありました。今回の旅では空港で買った本を電車で読み、待ち合わせ場所では周りを眺め、目的地の下調べを抜かりなく行い、危機管理を徹底しました。おかげで大体の場所と所要時間が感覚で分かるようになり、好きなシリーズ本にも出会いました。スマホがある普段の生活でもこのような準備やちょっとした時間の使い方を心がけたら、もっと充実するだろうなと感じたスマホなし1週間でした。

スマホがないといらなくなる周辺機器。イヤホン、モバイルバッテリー、充電器など(12月6日筆者撮影)

 

参考記事:

5日付 朝日新聞デジタル「デジタル交流 対面あってこそ」