感じたモヤモヤ、伝えていますか

周囲の人の言動やソーシャルメディア内での発信、新聞やテレビの報道といったものに日々触れているなかで、モヤモヤを感じることはありませんか。納得できなかったり、違和感を覚えたり。私も感じることがあります。ただ、その思いを人に伝えることは、そこまで多くはありません。理解されないかもしれない、面倒な人だと思われるかもしれないといった不安を抱いてしまうからです。モヤモヤとした感情を自身の手でもみ消しているような感覚を覚えます。自分の感じたことを押し殺してしまって、本当に良いのでしょうか。

 

納得できないことがあれば、自分の感性を信じて

感じたモヤモヤを人に伝えることで、得られるものはとても大きいと思います。自分がなぜ納得できなかったのか、違和感を覚えたのかが言語化されるからです。モヤモヤの一言で済まされていた感情が深く掘り下げられて、より鮮明に浮かび上がってくるのです。たとえ上手に表現できなくとも、相手の言い換えや共感の言葉によってよりクリアに説明されるかもしれません。

 

米連邦最高裁の人工妊娠中絶を憲法で保障された権利として認めない判決に対して、スウェーデンのアーティストが抗議の声を上げると同時に、中絶基金への寄付を呼び掛けている=Zara LarssonのInstagram上での投稿

自分が考えたことが必ずしも相手に受け入れられるとは限りません。その場合でも、自分とは異なる考え方、ものの見方に触れたり、思考をより深めたりすることができるはずです。また、「自分と同じことを感じていた人がいたんだ」とモヤモヤを伝えられた相手の心を軽くできるかもしれません。米連邦最高裁が人工妊娠中絶を憲法で保障された権利として認めない判決を下したというニュースを耳にしたとき、納得できない私はかなりモヤモヤしていましたが、大好きなアーティストがソーシャルメディアで抗議していたのを見て、「私だけじゃないんだ」と心強く感じたことがあります。

 

モヤモヤを人に伝える手段は、話すということだけではありません。ロックバンド・マネスキンは、その活動を通じて「自由を守り、互いに尊重してほしい」というメッセージを伝えようとしています。女性メンバーのヴィクトリア・デ・アンジェリスは、他の男性メンバーと同じように上半身裸になり、ニップレス姿で演奏することも少なくありません。そこには、女性の身体が、男性の身体よりも性的な視線で見られやすいことへの反発の意が込められています。また、性的少数者に対して抑圧的な政策がとられているポーランドでの公演でこのバンドは、男性メンバー同士でキスをして「愛に間違いはない」と叫ぶパフォーマンスもしています。

今夏のロックフェス・サマーソニックでも、ヴィクトリアはニップレス姿でステージに上がりました。しかし、King Gnuのメンバーが彼女のニップレスを茶化すような場面が見られました。人に伝えよう、社会に訴えようと示した彼女の姿勢を、たとえ悪気がなくとも、軽くあしらうことは決して許されません。モヤモヤを人に伝えられた際に、どう受け取るのか注意したいものです。

芸術を通じて伝えたり、文字に起こして発信したり様々な方法で、人に伝えることができます。どんな方法であっても、対話は社会をより良くするものです。感じたモヤモヤ、自分なりの方法で伝えてみませんか。

 

参考記事:

16日付 朝日新聞夕刊(愛知4版) 9面

15日付 朝日新聞夕刊(愛知4版) 2面