首都圏交通とは違う!「丹鉄」に見たローカル線の魅力

今年の7月末にJR東日本がローカル線の収支を公表し、対象となった35路線66区間のすべてが赤字であったことが話題になりました。たとえ利用者は少なくとも、交通空白地になりやすいからこそ市民の足として残していかなければなりません。

今年の夏、ゼミの合宿で京都の最北端に位置するまち、京丹後市を訪れました。人口は約5万2000人。日本海に接しているため、新鮮な海の幸を味わうことができます。

(Googleマップより 赤い丸は筆者の付け足し)

 

ここを走るのが京都丹後鉄道、略して「丹鉄」です。宮豊線、宮福線、宮舞線の3路線から構成されています。天橋立にも停まるため、天橋立観光には欠かせない鉄道です。

(京都府HPより)

「電車」というと都心を走るJRや民鉄、地下鉄のような何両も続く立派なものを想像してしまいます。けれど、丹鉄に乗って、こぢんまりとしているからこその良さを感じました。車両はたったの1つ。車掌室も人一人が座れるほどのスペースしかありません。筆者が首都圏を走る鉄道に乗り慣れているからかもしれませんが、ところどころに木材が使用されていたり、コロナ対策のためと思われるビニールシートの間仕切りが突っ張り棒で固定してあったり、温かみのあるアットホームな車内の様子に驚きました。

(先頭から見える景色。この左横に車掌室があり、かばんは車掌さんのもの。あいにくの天気だが海の上を走り、とても素敵)

観光客として乗車を楽しみましたが、やはり鉄道の第一の目的は地域住民の足となること。今回の旅でも、地元の方と思われるおばあさんやおしゃべりをする女子高生がおり、土地に根付いている鉄道だと実感しました。実はこの京都丹後鉄道には「北近畿タンゴ鉄道」という前身があり、2009年度には第三セクター鉄道で一番の赤字路線でした。また官民の共同出資による「第三セクター方式」では、責任の不明瞭さや行政への財務的依存など、根本的な経営上の課題も存在しました。財政赤字と体制の問題から、純粋な民間企業による自律的な運営が求められていたのです。2015年には上下分離方式のもと、北近畿タンゴ鉄道株式会社から大阪に拠点を置く旅行代理店WILLERの子会社WILLER TRAINSに鉄道運行事業が移譲され、現在の「京都丹後鉄道」となりました。車窓を眺めながら食事を楽しむことのできる「丹後くろまつ号」を走らせるなど、廃線の危機に晒されぬようビジネス展開にも工夫が凝らされています。

市民の大切な移動手段である交通。首都圏では毎朝、通勤通学ラッシュですし詰め状態です。都心の車窓からはビルばかり。だからこそ、ローカル線を乗りなれない筆者にとってとても新鮮な体験でした。コスト面は厳しくとも、生活インフラとしての価値は変わりません。「人口減少」、「コロナ禍」などがありますが、この苦境を乗り越えてほしいです。

 

*第三セクター…国や地方自治体と民間企業が共同出資して設立された事業体のこと。旧国鉄時代、赤字路線の存続を図る流れの中で「第三セクター方式」が多く発表された。

*上下分離…列車の運行を担う主体と、鉄道インフラの維持管理を担う主体を別の者とする仕組みのこと。

 

参考資料:

日本民営鉄道協会、「第三セクター鉄道|鉄道用語辞典

日本民営鉄道協会、「上下分離|鉄道用語辞典

京都府建設交通部交通政策課、「鉄道事業再構築(上下分離)の取り組みについて~北近畿タンゴ鉄道(KTR)から京都丹後鉄道(丹鉄)へ~

 

参考記事:

9月13日朝日新聞デジタル、「自転車でそのまま乗れる 丹鉄サイクルトレイン運行開始 京都