「防災の日」- スマホがなくても家に帰るには

9月1日は「防災の日」です。1923年のこの日に発生した関東大震災から、今年で99年になります。地震の震源地は相模湾北西部、マグニチュードは7.9。地震と火災で、当時の東京市と横浜市の大部分が廃墟と化し、死者・行方不明者は10万人を超えたといいます。

地震の二次災害というと、火災や津波を思い浮かべるかもしれません。しかし、最近では生活様式の急激な変化に伴い、スマホやインターネットの通信障害という新たな問題が懸念されています。ネット回線が落ち、ネット検索もGoogleマップも電話もSNSも使えなくなったとき、どう連絡を取れば良いのか、どうやって外出先から家に帰れば良いのか。現実的な問題として、備えておく必要があります。

災害時には、携帯電話が繋がりにくくなります。家族や知人への安否確認など一般の利用が急増することに加え、警察や消防などに救護を要請する緊急通話が増えることが理由だといいます。2011年の東日本大震災では、通信キャリア各社が最大95%の音声通話規制を行なったという調査結果も紙面にありました。この時、東京の筆者の家でも、揺れが収まった直後に祖母と電話が繋がった以降は、全く機能しなくなりました。交通機関の混乱で帰宅を断念した父が会社に泊まっていたと知ったのは、連絡がついた翌日でした。

携帯電話が繋がらない時でも、公衆電話なら連絡できる場合があるといいます。そのため、公衆電話の場所を普段から確認し、小銭も用意しておくことが、いざという場合の備えに繋がります。さらに、被災地以外への電話は比較的繋がりやすいため、遠方に住む親戚を介して連絡をとる、という手段もあるそうです。また、携帯電話の音声通話ができなくても、インターネットが使えることがあります。先日付の読売新聞によると、災害時には「00000JAPAN」という公衆無線LANが無料で開放されるようです。ネットが繋がれば、情報を得られる安心感が生まれます。

しかし、上記で紹介したのは、公衆電話なら繋がる「かもしれない」、インターネットが使える「かもしれない」という話です。利用できなかった時を想定して準備をしておくことが大切です。

いつも使っている公共交通機関が止まってしまったと仮定します。インターネット検索をせずに、別のルートを思いつきますか?Googleマップに頼らずに、途中の経由地から近くの大きい駅や家まで辿り着くことはできますか?高速道路が通行止めになった時、カーナビなして一般道を走って家に帰ることができますか?自転車や徒歩での通勤通学であればこれらの心配はないのですが、特に都心の電車を利用している場合、普段からこうした点に気を配っておきたいものです。

避難訓練に決まった型はありません。それは、社会の状況に合わせたものであるべきですし、明らかになった弱点に応じて常にアップデートされていく必要があります。例えば、東日本大震災を境に、筆者の学校では津波を想定した訓練を盛り込むようになりました。他にも、筆者が中学時代を過ごしたアメリカの現地校では、銃の乱射事件を想定した訓練が頻繁にありました。学校での銃撃事件が絶えない米国社会の現状を反映したものです。日本とアメリカの環境が異なるように、現在の日本と数10年前の日本の環境も当然異なります。周囲の状況が違えば、求められる対策は変わってきます。

ここ10年で、インターネットやスマホが急激に普及し、社会は大きく変わりました。人々の生活や行動が変化するなか、対処すべきポイントは大きく変化しています。スマホという便利な機器が登場したことで失われた能力が、現代人の弱点かもしれません。紙の地図を読めない人が増えているという話も耳にします。現代社会の特性に合わせて、電話やインターネットが全く使えないことを想定した備えが、必要とされていると思います。

 

 

 

参考記事

31日付 読売新聞朝刊 (北海道12版)15面(くらし) 「スマホ不通……焦らず安否確認」

参考文献

笹山晴生、佐藤信、五味文彦、高埜利彦(2018)「詳説日本史 改訂版」山川出版社、331頁