集団を対象とする誹謗中傷 罪悪感の低さ問題

留学先の韓国に来て、汚い言葉に触れる機会が増えました。韓国国内でというわけではありません。日本のSNS上でです。留学に関する情報を集めるのに、SNSは非常に便利なツールです。Twitterで、「韓国留学」と検索すると、同じく韓国で留学生活を送っている人たちの体験談が並んでおり、こちらの暮らしにそこまで詳しくないまま来てしまった筆者はいつも助けられています。しかし、韓国に少しでも関係する言葉を検索しようとすると、どうしても目に入ってしまうのが韓国に対する罵詈雑言です。想像を絶するような汚い言葉が並びます。

その矛先は、韓国だけでなく韓国に関わる日本人にも向きます。先日筆者が通う大学で、ソウルでの勤務経験がある朝日新聞の記者による講演が開かれました。筆者は韓国が抱える歴史の痛みや在日朝鮮人の悲しみに誠実に寄り添うその方の記事に強く共感し、自分も記者になることができたらこのような記事を書きたいと思いました。しかし、ネット上でその方に投げかけられる言葉は「反日」「売国奴」といったひどい言葉ばかりです。

筆者自身も、先日あらたにすに日韓関係に関する記事を投稿したところ、Twitterで「この記事は全然ダメ」という言葉を投げられました。筆者の記事と韓国を同時に否定するツイートでした。

日韓の間には、長年解決できずにわだかまりとなってしまった問題が多くあります。国と国が対立している以上、国民同士が批判し合うのは自然なことだと思います。しかし、批判は誹謗中傷ではありません。「韓国政府は日韓関係改善のためにこのような政策はやめるべきだ」これは批判ですが、「韓国人は嘘つきだ」これはただの中傷でありデマです。現在、日本のTwitter空間に流れている韓国に対する否定的なツイートの大部分は誹謗中傷だと言えると思います。

韓国に対するヘイトが溢れるのは、個人を中傷するのに比べて国や団体を標的にする方が、抵抗感が少ないと感じる人が多いからではないでしょうか。SNS上での誹謗中傷そのものが、相手の顔が見えないから横行する振る舞いだとされています。なかでも集団を中傷する場合は個人とは異なり相手の顔を思い浮かべることすらできません。

ですが、想像できなくてもその画面の向こうに傷ついている人は確かにいます。「韓国」という抽象的な対象に石を投げたつもりでも、画面の向こうでは一人の人間が傷ついています。気軽に「嫌韓」ツイートをしている人たちは、傷つけている対象が自分と同じ人間だということを自覚しているのでしょうか。

 

参考

7月1日付 読売新聞オンライン「有害情報対策『開示を』 有識者会議 SNS事業者らに」

6月30日付 朝日新聞デジタル「ネット中傷対策開示の仕組み『速やかに』 総務省に有識者会議が提案」