総裁選で話題 「記者クラブ」とは

18日、自民党総裁選(29日投開票)に立候補した4氏が、日本記者クラブが主催した公開討論会に臨みました。ここではライブ配信を見ている記者からの質問を参考に、クラブの企画委員が各候補者に代表質問をする方式がとられました。

 討論会では、各候補者が皇位継承や日中関係などについて持論を展開したほか、新型コロナウイルス対策などで論戦を交わしました。討論が白熱する一方で、ネット上では「不公平」「高市外し」などという言葉が飛び交い、一時、「記者クラブ」というワードがトレンド入りする事態になりました。例えば、日中関係、日韓関係、対北朝鮮政策に関する質問を、外務大臣や防衛大臣を経験した岸田文雄氏、河野太郎氏のみに聞くなど、両氏に質問が集中。高市早苗氏や野田聖子氏には回答の機会が与えられませんでした。高市氏を支援する安倍晋三元首相は19日のツイッターで、「彼女の外交安全保障に於ける見識を示されたら困るのか、彼女をスルーする見識無き質問者まで出る始末()」と綴りました。

 「記者クラブ」という言葉を検索したり、友人と「記者クラブ」について話したりしてみると、その存在を詳しく知らない人、そもそも知らない人が多くいることに気がつきました。まず「記者クラブ」とは明治時代から続く日本独特のシステムで、政府や地方自治体などを取材するために、メディア側が設置した任意団体を指します。記者クラブの歴史に簡単に触れると、1890年に帝国議会が開会した際に、傍聴取材を求める記者が「議会出入記者団」を結成。その後、新たな新聞も加わって「共同新聞記者俱楽部」が生まれ、戦争に突入する1941年には日本新聞同盟のもとで「1官庁1記者クラブ」となりました。

 この「記者クラブ」の評価については、関係者の間でも大きく分かれています。日本新聞協会が2006年に発表した記者クラブに関する「見解」の中で、「言論・報道の自由を求め日本の報道界が1世紀以上かけて培ってきた組織」とした一方で、浅野健一元同志社大学教授は『記者クラブ解体新書』の中で、記者クラブに加盟していないメディアにとって、取材アクセスの障壁となるため、「日本新聞協会加盟社による情報独占カルテル」であると断じています。

 新聞社でのインターン経験のなかでは、「マスメディアは国民の知る権利に奉仕する役割がある」と教わってきました。国民の知る権利に奉仕するということは、出来る限りの情報を国民に提供することだと考えます。その点で、今回の総裁選討論会は、各候補者の回答時間や回答数を平等にするべきでした。記者クラブを自らの都合の良いように運用していけば、今後、さらにメディア離れが進んでいくのではないかと懸念しています。

参考記事:

読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞 自民党総裁選関連記事

 参考資料:

南彰『政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す』、朝日新書、2020

望月衣塑子、マーティン・ファクラー『権力と新聞の大問題』、集英社新書、2018

林香里『メディア不信 何が問われているのか』、岩波新書、2017