「てまえどり」に込められた思い

今日から7月に突入、待ち焦がれた夏の始まりです。段々と暑くなり、冷たいスイーツも食べごろかと思います。

先日、コンビニを訪れた際にスイーツ棚に手を伸ばしました。すると、ある文字が目についたのです。「て・ま・え・ど・り」です。わずか5文字のこの言葉にドキッとさせられました。筆者は普段、奥から商品を取る癖があります。新鮮さを求めるというよりは、他人が触れたかもしれない手前の商品を取るのに抵抗があるからです。コロナとは関係なく、小さい頃からの習慣なのです。

やや葛藤はありましたが、「すぐにたべるなら、手前をえらぶ。」と記されたPOPに背中を押され、約10年ぶりに手前から取ることに決めました。

7月1日 近所のコンビニにて筆者撮影 ①セブンイレブン ②ローソン ③ミニストップ ④ファミリーマート

近年、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」は深刻な問題です。そこで一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会、消費者庁、環境省が共同で、消費者に商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」を呼びかけています。食品陳列棚では、消費期限が近い商品→賞味期限が近い商品の順に並ぶからです。奥から取るお客さんが多いほど廃棄食品は増え続けます。解決策として効果的なのが、先月から始まった商品棚への掲示です。

農林水産省 ホームページより引用 POPをダウンロードすることができる。

本日の読売新聞朝刊では、29日に開かれたG20による開発相会合の記事が一面を飾っています。

SDGs達成が新型コロナの影響で困難になっているとし、資金調達の強化で合意した。

今回のコロナ禍によって最も大きな影響を受けたのは経済と雇用です。持続可能な開発目標のうち、貧困や飢餓に関する「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」の目標は、発展途上国はもちろん、日本もゴールから遠のいたかもしれません。では、食品ロスにあたる「12.つくる責任 つかう責任」はどうでしょうか。この目標は現在までずっと、日本で最も達成度が低い現状にあります。コロナ禍のなかで外食が抑えられていることもあり、小売店での食品需要は堅調です。このままでは悪化の一途を辿ることになります。

「SDGsプラットフォーム」より引用

もう一つ。食品ロスが進むと食品を焼却処理する際に排出されるCO2が増え、温暖化をさらに促進することにもなります。本日の日経新聞朝刊、30日の読売新聞朝刊では脱炭素運動について取り上げられています。カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になること)の実現に向け、官民の取り組みが加速化しているとのことですが、実現には国民のライフスタイルの転換もまだまだ不可欠です。

もちろんやむを得ず後ろから商品を取りたい場合もあるでしょう。読売新聞が運営するサイト「OTEKOMACHI」の記事では主婦層の声に耳を傾けています。「数日買いだめする時はたまに後ろから取る」。これは50代主婦の言葉です。家計を切り盛りする主婦の知恵と言えるかもしれません。足腰の弱い高齢者も頻繁に買い物に行ける訳ではありません。だからこそ、POPでも「すぐにたべるなら」と付け加えているのだと考えます。

その表記があっても尚、ネット上には「消費者への責任転嫁だ」「だったら値引きしろ」という声が飛び交います。しかし、それこそが責任のなすり合いだと思うのです。「誰かがやるだろう」と目をそむけるのでなく、私たち一人ひとりが意識を変える必要があります。少なくとも筆者は「てまえどり」を機に環境への意識が変わりました。すぐに食べるのであれば実行することを推奨したいです。

POPを再度見てみると、いずれも平仮名が使用されています。これならお使いに来た子供も食品ロスに関する意識が高まることでしょう。あらゆる世代の人々が、自分たちにあった食品ロスの対策に、今こそ取り組むべきだと思います。

 

参考記事:

1日付 読売新聞朝刊 埼玉13版 1面「G20対コロナ主導一致」

1日付 日本経済新聞 埼玉12版 3面 『世界の排出量2割に「値段」』

6月30日 読売新聞朝刊 埼玉12版 28面 「脱炭素 海 街 家で」

参考資料:

農林水産省 『小売店舗で消費者に「てまえどり」を呼びかけます。』小売店舗で消費者に「てまえどり」を呼びかけます:農林水産省 (maff.go.jp)

OTEKOMACHI 『食料品を買うとき「てまえどり」してますか?』【発言小町】食料品を買うとき「てまえどり」してますか? | 大手小町 (yomiuri.co.jp)