コロナワクチン接種体験記

去る6月23日、筆者はコロナワクチンを接種してきました。今回の記事では、接種に至るまでの経緯と体験、感想を記録したいと思います。

都内の実家にワクチン接種券が届いたのは今月17日。大半の自治体では、非高齢者への発送が遅れており、筆者が現在下宿する某市でも、65歳以上、60〜64歳、50歳代、35〜49歳、34歳以下の順に送られる計画です。筆者と同世代の友人は誰も接種券を入手できていない中、いち早く入手できて、喜びのあまり飛び上がってしまいました。

すぐに自衛隊大阪大規模接種センターを予約しました。公的機関のウェブサイトは、スマホの縦型画面に対応していなかったり、タブが多すぎたり、見づらい作りになっていることが多いのですが、予約用サイトはUIが良くて驚きました。高齢者が使うことを意識してか、文字やボタンのサイズも大きくなっており、操作しやすかったです。

会場は、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)。京阪電車の中之島駅から直結しています。天王寺や新大阪、梅田などのターミナル駅からも無料の臨時シャトルバスが出ており、筆者も利用しました。車内は7割くらいが高齢者だったように思います。若年層は殆どいませんでした。

接種センターの出入り口(筆者撮影)

午前9時半、入口をくぐって、アルコール消毒と体温確認。エスカレーターで5階に上がって、受付を済ます。3階と10階の接種会場のうち、筆者は10階へ向かうよう指示を受けました。他の階は医療従事者らの控え室や物資の保管場所になっていたようです。至る所に、アルコール消毒機と案内係の人員が配置されており、人流が滞ることなく、スムーズに進むよう会場が設計されていました。

看護師による予診票の確認を受けたのち、医師による問診と注射。モデルナ製のワクチン0.3mLを左肩にブスッ。問診から注射スペースを出るまで、およそ20秒。無駄な会話は一切なく、工場の流れ作業のような素早い仕事ぶりに驚かされました。注射を終えると、接種済み証の交付と2回目の予約。大広間で暫く待機したのち、アナフィラキシーが起こらなかったので、会場を出ました。入場から退場まで僅か30分。超ハイスピードでした。

1回目を終えた感想としては、かなり気が楽になりました。2回分完了はしていないものの、未接種よりは安心できます。同時に、権力者でも大富豪でもない一介の凡人たる筆者が、コロナワクチンを無料で打ってもらえたということに感謝の気持ちで一杯になりました。会場の医師、看護師、自衛隊員、ワクチンを確保してくれた政府、そして何よりも、メーカーに心の底からお礼を申し上げます。

昨今「ワクチン」と聞くと、副反応の事例や政争の具、生産の遅れなどネガティブな情報が連想されがちです。しかし、筆者は、世界中の製薬会社が果敢な挑戦によって生み出した歴史的な大発明だと思います。月刊誌『人民中国』の今月号には、北京バイオ製品研究所の開発の舞台裏が紹介されていました。

製薬業界では、一つのワクチン開発を成功させるために、10億ドルの投資と10年の歳月が必要とされます。しかも、莫大な資金と人員、年月を割いても必ず成功するという保証はなく、経営上のリスクを伴う事業です。北京の同研究所は、昨年の1月末に開発チームを立ち上げてから、治験を完了するまでの工程を、僅か10ヶ月で成し遂げました。研究者らは、自宅に帰らず所内で寝泊まりして、実験を毎日繰り返したそうです。垂直展開するはずだった実験を同時並行的に行うといった革新的な取り組みは特筆に値します。

さらに、コロナワクチンの量産体制を整えるため、既存の高規格な培養機材設備を取り壊してまでして、製造作業場を建てました。成功するかどうか分からない開発途中の段階における、リスクある経営判断でしたが、先手の判断が結果的に奏功しました。ほぼ世界最速で開発に成功し、量産体制もすぐに整えています。様々な取り組みが、同誌には克明に記されていました。

中国製は発症予防効果が比較的低い、という調査結果が出ています。それでも、一定の効果がある不活化ワクチンを早急に開発、増産したことは、賞賛に十分値します。欧米露の企業も同様に、相当の犠牲やリスクを背負いつつ、様々な部門の英知を結集させた末、生産に漕ぎつけたことでしょう。世紀の大発明の裏に、並ならぬ努力があったことを知ると、感謝の気持ちは益々深まります。

配布されたパンフレットの一部

社会や企業、学校が通常の活動を取り戻すには、このワクチンが生命線です。もはや、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の効果は薄く、街は人出で溢れています。大阪のうめきた広場では、毎晩、階段や外周ベンチに座って飲食する若者が何百組といます。京都の鴨川デルタや河岸でも、平日休日を問わず、多くの若者が宴会を開いてはしゃいでいます。

正直、筆者は路上飲みに同情を覚えます。重症化する恐れがあろうとも、「人と会って話す」ことこそ人間の本性なのだから仕方ない。かくなるうえは、ワクチン接種しか、社会再生の道はありません。中国同様「接種すべき者は全員接種」という原則に、皆が従うべきでしょう。

心配なのは、ネット上で消極的な意見が多く見られることです。体が磁力を帯びたり、5Gの電波に操られたりするなどという情報に騙される人は少数ですが、注射を希望しない人はかなりいます。ヤフーのアンケートによると、約80万の投票のうち、3割超が「当面受ける気はない」2割超が「様子を見てから打ちたい」と消極的な回答。ワクチンを奨励する動きに対し、同調圧力だと反発する意見も散見されます。

製薬業界の英知が結集して作り上げた、世紀の発明品。社会の正常化を望むなら、接種しない手はない。1回目を受けて強く実感しました。接種券がまだ手元にない方も多いと思いますが、届いたら早急に予約を取るようにしましょう。

大阪うめきた広場にて路上飲みする人々(6月15日20時、筆者撮影)