パナソニック、米ブルーヨンダー買収の意図とは

パナソニックが米ソフトウェア大手のブルーヨンダーを買収する方針を固めました。投資額は7000億円を軸に調整しており、同社にとって過去最大級のM&Aになる見込みです。

ブルーヨンダーは、米アリゾナ州に本社を置くソフトウェア会社です。人工知能を活用し、製品の需要や納期を予測するソフトを手掛け、顧客企業のサプライチェーンを効率化させるサービスを提供しています。パナソニックは自社の武器であるエアコンや洗濯機、冷蔵庫等のハードウェアに、同社のソフトウェアを融合させることを望んでいます。従来の家電製品を単体で売り切るBtoCビジネスは安売り競争に陥りやすく、売り上げが不安定な商法でした。買収が実現すれば、ハードとソフトが合体した高付加価値製品サービスを継続課金してもらうBtoB形態のビジネスモデル開拓に見通しがつきます。

日経新聞は以下のような連携が可能だと例示しています。

パナソニックは店頭に設置する監視カメラや物流施設で使われるバーコード読み取り用の携帯端末などで高いシェアを持つ。これら製品にブルーヨンダーのソフトを組み合わせることで、高い精度をもった在庫管理サービスなどとして提案しやすくなる。

経営の神様こと松下幸之助が創業した、関西の大企業は往年の輝きを失っています。時価総額では、平成元年に357億ドルで世界18位だったのが、現在は301億ドル。世界から遅れを取る日本企業の中でさえ45位という有様です。技術力単体で言えば、中韓の競合他社やソニー、日立製作所に引けを取りません。しかし、製品デザインやUX(ユーザー目線の機能設計)、販売戦略などが劣っているため、持てる力を十分に発揮できずにいるのです。

ブルーヨンダーは、従業員数や売上高など会社の規模でいえば圧倒的に小さいものの、売上高に対するEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)比率は約24%を誇ります。収益力は、桁違いに格上です。今回の買収を機に、パナソニックは自社の古い慣習を全て捨て去るべきです。相手のサービスだけでなく、挑戦的な企業風土や成果主義、意思決定の速さ、経営センス含め、良いところを全て吸収するぐらいの意気込みで組織改編に取り組んで欲しい。当然プライドを捨てて、教えを乞う必要があります。

市場では、株価が1日で6.5%超の大幅下落。高額買収による財務負担を懸念してか、売り注文が押していますが、長期的な視野で捉えれば、事業競争力は間違いなく上がるはずです。約10年前の三洋電機買収後に伸び悩んだ経験を教訓に、今度こそは事業モデルの変革を実現できるのか。企業の本気度が問われます。

 

参考記事:

9日付 日経新聞朝刊(東京13版)1面「パナソニック、米社買収 最終調整」